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出版社内容情報
大胆に、かつ冷静に。
報道の危機が叫ばれて久しい。そうしたなかで災害報道も苦境に瀕している。被災の現実を迅速に伝えようとしても、逆に被災者に迷惑をかけてしまう事態がネットにさらされ、「マスゴミ」と揶揄される始末である。情報の伝え手と受け手の信頼関係が底抜けしている。徒労感や閉塞感が充満している。情報テクノロジーが高度化すればするほど、情報空間は貧しくなってきているとさえいえる。
これまでに何度も議論の俎上に載せられてきた「災害報道のベターメント」の問題に関して、解決に向けたあらたな一歩を踏み出すためには、虚心坦懐に理論の立脚点を問いなおし、実践上のアプローチをかえることが求められるのではないか。
満身創痍の災害報道に対する特効薬はない。だからといって、場当たり的な対症療法に終始するのではなく、根本治癒を目指したものでなければならない。
本書では「情報」の特性を再定義して、コミュニケーションモデルを描き直し、リアリティの水準から論を興す、新たな地平に立つことにした。人々の命を救う緊急報道、人々の命を支える復興報道、人々の命を守る予防報道の三局面に関して、災害報道のありかたをトータルな視座を確立しようとしている。
自然災害・社会災害が頻発する現代社会において、災害報道をめぐる根本問題にメスを入れることは、すでに待ったなしの状況にある。大胆に、かつ冷静に。「災害報道学」(Disaster Journlism)の礎石となることを目指した待望の書が、ようやく世に放たれる。
目次
序章 災害報道研究をひらく
1 満身創痍の災害報道
2 対症療法ではなく根本治癒を
3 本書の構成
第Ⅰ部 災害報道研究の理論
第1章 災害報道の定義
1 災害報道の基本3機能
2 災害報道の基本4象限
第2章 災害報道研究史を概観する
1 災害報道研究の布置
2 マスコミ研究における災害報道研究のプレゼンス
3 災害情報研究のなかの災害報道研究の動向
第3章 災害報道研究の新たな理論モデル
1 コミュニケーション・モデルズからの示唆
2 減災の正四面体モデルの特長と限界
3 リアリティの地平
4 メディア・イベントにおけるリアリティの共同構築モデル
第Ⅱ部 災害報道の局面別の再検討
第4章 緊急報道の分析
1 メディア・イベントとしての東日本大震災
2 東日本大震災の緊急報道のリアリティ分析
(1)第1フェーズにおける映像内容の分析結果
(2)第1フェーズにおける呼びかけコメントの分析結果
(3)第2フェーズにおける映像内容の分析結果
(4)第2フェーズにおける呼びかけコメントの分析結果
(5)第3フェーズにおける映像内容の分析結果
(6)第3フェーズにおける呼びかけコメントの分析結果
3 リアリティを高める糸口を探求する
(1)情報の「ローカリティ」の早期確保の必要性
(2)リアリティ・ステイクホルダーとしての役割認識の必要性
(3)災害情報をめぐる基本フォーマットからの逸脱の可能性
第5章 復興報道の分析
1 メディア・イベントとしての四川大地震
2 四川大地震の復興報道のリアリティ分析
(1)「カネ」という数値:寄付金の額をめぐるリアリティ
(2)「時間」の数値:被災者に一方的に提示される期限のリアリティ
(3)「ヒト」の数値:死者のカウントアップのリアリティ
3 リアリティを重ねる糸口を探求する
第6章 予防報道の分析
1 メディア・イベントの構成員に着目する
2 防災番組の登場人物分析
(1)「NHKスペシャル」の内容分析
(2)「クローズアップ現代+」の内容分析
3 リアリティを深める糸口を探求する
第Ⅲ部 理論と実践の往還
第7章 実践事例1:災害報道版クロスロード
1 災害報道版クロスロードの開発
2 災害報道版クロスロードの実際
3 災害報道版クロスロードのポテンシャリティ
第8章 実践事例2:早期避難の呼びかけ―広島モデル―
1 呼びかけの呼びかけ
2 呼びかけの呼びかけの新展開
3 広島モデルのポテンシャリティ
第9章 実践事例3:KOBE虹会
1 溶け合うことばたち
2 他者との交歓
3 共同性のポテンシャリティ
第Ⅳ部 到達点からの展望
第10章 COVID-19とインフォデミック
1 インフォデミックの情況
2 インフォデミック禍のリアリティ
(1)真偽の未定性・不定性
(2)分断と連帯
(3)可視化と不可視化
3 情報のワクチノロジー
終章 リアリティのリアリティ
あとがき
索引
内容説明
ひとりでも多くの命を守りたい…。災害報道の現場を熟知する著者が渾身の力を込めて執筆した実務と理論を架橋する待望の1冊。
目次
災害報道研究をひらく
第1部 災害報道研究の理論(災害報道の定義;災害報道研究史を概観する ほか)
第2部 災害報道の局面別の再検討(緊急報道の分析;復興報道の分析 ほか)
第3部 理論と実践の往還(実践事例1:災害報道版クロスロード;実践事例2:早期避難の呼びかけ―広島モデル ほか)
第4部 到達点からの展望(COVID‐19とインフォデミック)
リアリティのリアリティ
著者等紹介
近藤誠司[コンドウセイジ]
1994年、NHKに入局。約20年間、ディレクターとして災害報道などに携わる。NHK神戸放送局「震災メッセージ」シリーズの企画・制作で、総務省消防庁の「防災まちづくり大賞」(消防科学研究センター理事長賞)を受賞。NHKスペシャル「メガクエイク 巨大地震―KOBE 15秒の真実」(2010年)で、科学技術映像祭・内閣総理大臣賞、中華人民共和国・国際科学教育番組コンクール・銀獅子賞を受賞。2013年、京都大学大学院情報学研究科社会情報学専攻(博士後期課程)指導認定退学、博士(情報学)。翌年NHKを退職し、関西大学社会安全学部安全マネジメント学科の助教となる。2015年、同准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。