感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かふ
12
塚本邦雄は葛原妙子を「幻視の女王」と名付けたが、それは塚本の前衛短歌に引き付けた読みであって、葛原妙子の幻想短歌はけっして理念的なところから出発したのではないのは、川野里子『新装版 幻想の重量──葛原妙子の戦後短歌』を読めば理解できると思う。葛原妙子の幻想性は戦争体験という女性の身体性を通して、西欧と日本という精神の中で分裂せざる得ないものであった。それは葛原妙子の身体的なものの基盤よりは、理念(理性)の歌という短歌の読み解き(解釈)であり、塚本邦雄という眼鏡を通して見た虚構性の葛原妙子の短歌である。 2023/03/07
おおた
12
現代短歌が苦手なので躊躇したけど塚本邦雄の解説があれば乗りきれるかもと思って手に取る。現代短歌の苦手なところは極端な破調と観察できないほどのイメージ飛躍。見知らぬ森に迷いこんで右も左も分からないところを、やはりイメージが飛躍しがちなガイドが解説してくれるので、ずっと雲の上を漂うような読書となる。「とり落さば火焰とならむてのひらのひとつ柘榴の重みにし耐ふ」の魔術的表現が好き。2017/03/11
保山ひャン
3
葛原妙子の歌を百、本歌探索を中心に鑑賞、対決した本。定家の「花も紅葉もなかりけり」に通じる、ないものを歌うテクニックというか作歌法が目立ったが、これは葛原妙子の特徴というより、選んだ塚本邦雄の好みが出たものかもしれない。百の歌にもれた「遺珠百五十撰」が巻末にまとめてあり、歌の解説に関連の歌が並んでいたりして、葛原妙子の世界に浸れた。これは塚本邦雄による、一種のDJなんじゃないか、とも。2016/07/19
ありくし
1
『作者の洞察力を時としては上廻らうとする洞察力がなくて、どうして鑑賞が可能となるだらう。私以外にそれをなし得る者はゐない。』とは痺れる。『詩歌とは視てはならぬものを、敢へて視ることの証ではなかつたらうか』 まさしく。 「卑しきことおもひしならずたふときことおもひしならず白き夏至の日」などなど、異界への扉が無数。2013/05/29
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