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内容説明
東京駅のホームを、五月の風が吹き抜けていた。列車から降りた鶴田源志は、両手に下げた荷物を降ろした。風の香りを嗅ぐようにフーッと一つ息を吸い込んだ。大きく背伸びをすると、ゴキゴキッと二つ三つ背骨がなった。昭和6年5月12日、午前10時ちょうど。源志は、熊本駅から「急行6列車」に乗り、いま東京駅に着いたところである。29時間半の長旅を物語るように、額と鼻の下にススがこすりついている。「よーし、頑張るばい」熊本弁を発し、気合いをいれた。持ちあげた風呂敷には、自分がつくった「日向夏ミカン」が詰まっていた。
目次
第1章 青年百姓上京す
第2章 甘夏さがし
第3章 逆風の中で
第4章 ブランドめざし
第5章 すべてを注ぎ
第6章 明日へのロマン
第7章 これからも、恋