内容説明
強烈な陽射しに身をさらし、癒されることのない渇きと対峙する主人公響子。表題作「トレドまで」他、各年代の女性の魂の漂泊を描く珠玉の短編6作品収録。
著者等紹介
半井澄子[ナカライスミコ]
東京都生まれ。早大在学中、現代文学研究会及び演劇研究会所属。卒後、芸術生活社編集部等勤務。1981年、同人誌「無尽花」を友人と創刊。2012年、終刊。「過ぎゆき」でコスモス文学中編小説部門新人賞奨励賞受賞。「幽明―桂さんへのオマージュ」でコスモス文学ノンフィクション部門新人賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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アキ
91
表紙のトレドの全景に惹かれ、表題作「トレドまで」のみ読了。日本からこれといって理由もなく、何か出口のようなものを求めて訪れたスペイン。乾いた暑さと池に反射するきらめく光に異国を感じながら、偶然訪れたトレド。薄暗い建物の中で出会った老女は、日本から家族と離れてこの国へたどり着き、ひとり生きてきた。明るく情熱の国と言われるが、赤土と石の建物はどこか寂しい感じがある。「いずれにしても、たったひとりで生きていくということは、なんと単純で、しかも複雑極まりないことか。」エル・グレコの絵の背景のトレドの街を思い出す。2021/04/23
きい
1
短編集です。ほとんどが戦後~昭和初期を舞台にした話で少し難しく感じましたが、 「庭の千草」がいちばん心に残りました。母は強し。2019/09/10
CD
0
全て別の女性が主人公の短編集。情景描写が異常に細かいのは、実体験だからとしか思えないのですが…。トレドまで、がやはり一番気になる作品でした。登場人物の人生に思いを馳せずにはいられない。2020/12/10