内容説明
文化文政期、すでに田沼意次は失脚し、松平定信も去った。還暦間近の頼杏坪は「難治の貧郡」と陰口される広島藩の北辺四郡の代官に任じられる。不正や収賄がまかり通り、農村は荒廃し、農民は貧と窮に倦んでいた。地方官吏として懸命に立て直しを計る彼の前に現れたのは、北辺の大地が育んだ露草のような女、志津であった…。頼山陽の叔父である広島藩の儒学者、頼杏坪がその真価を発揮したのは、老齢期に差しかかってからのことである。文学者、儒学者、行政官として民衆のために命を燃やした人物の物語。
著者等紹介
藤井登美子[フジイトミコ]
昭和22年生まれ。市立尾道短期大学卒業。在学時はサルトルの戯曲に惹かれ、同志たちと演劇部をつくり『午後五時から後の人』となって活躍する。卒業後は建設会社、町役場勤務を経て美術品販売店を自営。四十代半ばから独学で時代小説を書き始める。趣味は時空を超え、歴史上の人物たちと交流すること、そして能楽観賞。作品「花がたみ」(郁朋社)第四回中近世文学大賞受賞
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