内容説明
九州大学文学部国史学研究室(当時)で誕生した『九州史学』(1956年創刊)は、2006年に創刊50周年を迎え、2008年には150号を出すに至っている。本論文集は「境界」「境域」をキーワードに、上下2冊、全24編を収録する。上巻『境界のアイデンティティ』では、境界性・境域性を前提とした「アイデンティティ」の形成・展開をテーマとして、多面的なアプローチを可能にする論考を収録した。
目次
総説:境界のアイデンティティ
1 国家権力と系譜編纂(氏族系譜からみた渡来人;近世前期領主権力の系譜認識―寛永諸家系図伝の作成過程から)
2 境界権力の系譜認識(中世奥羽における系譜認識の形成と在地社会;中世西国諸氏の系譜認識;島津氏の自己認識と氏姓;琉球王権の系譜意識と源為朝渡来伝承)
3 言説のなかのアイデンティティ(近世前期における「日本人」の「エトニ」;「世界」と「神国」―西川如見の「天学」論をめぐって;「日琉同祖論」という言説)
4 境界性の止揚と近代国家(対馬藩の自己意識―「対州の私交」の検討を通じて;旧民法と帰化法案―小嶋和司「明治前期国籍立法沿革史」をめぐって)