内容説明
但馬国の庄屋・西村次郎兵衛が、子孫のために安永8年(1779)に書き残した公私にわたる心得書『家風親子茶呑咄』(編者所蔵)を影印で収録し、解説を付す。作者については、いまのところ、本書から判る範囲でしか判明しないが、代々庄屋職を継ぐ家に生まれ、若くして両親に先立たれ、幼少より辛酸を嘗めたようである。全体を26章に分かち、教訓書としてはかなり大部で、学者の説く観念的な教訓ではなく、実体験に裏打ちされた庄屋の知恵が凝縮されている。家や家業を存続させつつ、子々孫々まで一族が繁栄するための日頃の心懸けや、村政の責任者たる自覚と行動のあり方を、微に入り細を穿って書き尽くした「庄屋マニュアル」。本書はまた「生活マニュアル」でもあり、西村家の生活を彷彿とさせる。なかでも、子どもの金銭教育や妾の問題など、学者の教育論にはまず見られない独自の主張も見え、子育て書としても異彩を放つ。解説は50ページにおよび、各章の要点を記し、重要な箇所は意訳を掲げ、内容の理解を助ける。
目次
家業の恩を知る事
田畑免切相対致事
我分限を知る事
次男え分地之事
子供養育の事
隠居致す事
農家の商ひ害有る事
頼母子の人数差加る心得之事
金銀賃借・質物請判抔心得之事
奉加・勧化等附事
倹約致方の事
人と参会致す心得之事
下人召仕ふ心得の事
妻子衣類等に附申附方の事
家居普請、并諸道具の事
逼塞致方の事
諸芸の農家害多き事
酒宴の節心得有る事
身の治方心得有る事
朋友善悪の事
信心の致方心得の事
神祭福を祈る咄
訴訟致心得之事
堪忍致方心得の事
忌中勤方之事
家系の咄
著者等紹介
小泉吉永[コイズミヨシナガ]
1959年東京都に生まれる。1982年早稲田大学政治経済学部卒業。1999年「近世の女筆手本」で学術博士(金沢大学)を取得。法政大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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