内容説明
仏教の思想と民衆の世界観がどのように出会い、新しく秩序立てられていくか、その具体的様相を思想論的に描き出すこと、これが本書全体を貫く興味の中心である。材料とするのは毘沙門天で、その説話を主として考察の対象とする。時代としては、おおむね古代から中世の末頃までを念頭においている。その理由は、この期間に毘沙門天が、仏法守護神から福の神へとその信仰の中心を大きくずらしていくことと関連する。そのダイナミズムは、庶民信仰の成立そのものであり、本書の目的を達成することに格好の材料を提供すると思うからである。
目次
序論 研究史と本書の位置
第1章 大陸及び我が国への導入期における毘沙門天信仰(中国における毘沙門天信仰―『大正新修大蔵経』史伝部にみる毘沙門天信仰;我が国における毘沙門天信仰の初期的様態)
第2章 仏教説話の毘沙門天―仏法守護神から福神へ(『法華経』と毘沙門天―『今昔物語集』を中心に;説話のなかの観音・毘沙門同体論;念仏説話の毘沙門天;融通念仏信仰の展開と毘沙門天)
第3章 山岳宗教の毘沙門天―摂津神峯山寺(神峯山寺とその縁起;神峯山信仰と毘沙門天;地獄遍歴説話と毘沙門天;民俗神と毘沙門天―儀礼起源伝承を読む;曼殊院蔵『毘沙門天塔婆勧進帳』と神峯山寺)
結語にかえて―仏教の世俗化と庶民信仰
著者等紹介
橋本章彦[ハシモトアキヒコ]
1955年大阪生まれ。博士(文学)。大谷大学大学院博士後期課程満期退学。宗教民俗学、仏教文化論専攻。京都精華大学、京都橘大学、大阪芸術大学、神戸常盤短大、神戸親和女子大学、同志社大学などで教鞭をとる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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- 静かなるドン - 27巻