内容説明
複雑に絡み合う外交、国際協調の終焉、たび重なる戦争、安全保障・経済問題や価値観の対立―日米中の研究者が、緊張と対立が増す現代の問題にいかに対峙すべきか、歴史的見地から描き出す。
目次
1 帝国化する日本とアジア地域秩序構想―明治から大正へ(明治初期外交官による東アジア政策構想―駐露公使榎本武揚の「北守南進」論;対外硬派のアジア認識―鈴木天眼の思想と行動;犬養毅の対外論―日清戦後を中心に)
2 国際主義とアジア地域主義の相克―大正から昭和戦前期へ(第一次世界大戦期の対華国際借款団をめぐる日英関係;満洲事変とワシントン体制―二つの国際協調の終焉;大阪財界と戦時・大東亜共栄圏への道―栗本勇之助と政治経済研究会;満州国親属継承法と林鳳麟;日本統治下の台湾における日中戦争観―総督府の戦争記念活動を中心とした考察)
3 冷戦とアジア地域構想―昭和戦後期から現代へ(戦間期「新外交」論者と戦後冷戦秩序―芦田均の積極的再軍備論;F.D.ローズヴェルトの戦後アジア構想―中国大国化の条件;日韓国交正常化交渉(一九五一~一九六〇)と日本外務省の対北朝鮮外交方針―在北朝鮮日本財産処理方針の分析を通じて
現代中国政治における「毛沢東思想」の再定義と日中関係―月刊誌『中国研究』に見る同時代の語り)
著者等紹介
瀧口剛[タキグチツヨシ]
大阪大学大学院法学研究科教授。専門は日本政治史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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BLACK無糖好き
18
大阪大学を拠点とした近現代東アジアに関する研究プロジェクトの成果物。バラエティに富んだ論集。注目したのはフランクリン・ローズヴェルトの中国大国化構想をアメリカの西半球政策との関係も交えながら分析した章と、日韓国交正常化交渉における日本外務省の在北朝鮮日本財産処理方針の分析を元に、同省の対北朝鮮外交方針の形成過程を明らかにした章(執筆者は国立国会図書館職員!)。満州事変とワシントン体制を扱った章を除いては、全体として研究テーマのニッチな部分を掘り下げたものが多い印象。2021/06/01
ワッキー提督
2
タイトルに関係する広い歴史的スパンの論文を集めた論文集。第1・3・4・5・6・8・9・10章は自分の関心のある分野であった。特に第4章と第5章は第1次大戦期から戦間期に関する興味深いテーマを取り扱っており、今後の研究の進展に期待したい。 全体として歴史上の人物の思想・世界観に関する研究が多く、中には本書のタイトルに比べて個別的事象に偏り過ぎている印象の論文もあったが、全体としては読みごたえのある論文集であった。2020/09/20