内容説明
バブル経済に浮かれる時代の外務省キャリアの一家を主人公に、サディズムとマゾヒズム、価値の変換、両極の同位性を追求した傑作。リアリズムの極致とファンタジーが交錯する(『背徳の方程式―MとSの磁力』)。若者の偏執的な愛情を描く。三次元から二次元へのスライドと狂気(『人形―暗さの完成』)。一九七八年三月二十六日の成田空港開港阻止決戦、三里塚闘争をユーモラスに描く。生き生きと描写される新左翼活動家たちの闘争は、まさに現代の神話(『七十八年の神話』)。野村秋介と見沢はともに千葉刑務所に十二年収監されていた。野村と自分とを重ね合わせた、自伝的作品(『獄中十二年』)。遺品から発見された、未発表原稿。「主観的な真実」を信じ抜いた作家の原点。
著者等紹介
見沢知廉[ミサワチレン]
1959年、東京都文京区生まれ。高校在学中に共産主義者同盟戦旗派に加盟、1978年の三里塚闘争で成田空港占拠闘争に参加。中央大学法学部2部除籍中退。1980年より新右翼活動に入り、1982年、新右翼の一水会・統一戦線義勇軍書記長に就任。日本IBM、英国大使館等への火炎ゲリラ活動を行い、同年秋、スパイ粛清事件で逮捕。懲役12年の判決を受け、千葉刑務所などで1994年12月まで服役。1995年、獄中で執筆した『天皇ごっこ』を発表し、第25回新日本文学賞の佳作(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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半木 糺
1
見沢知簾が獄中で執筆した未発表原稿を復元し、活字化して出版したもの。後の『天皇ごっこ』につながる短編も収録されている。注目すべきは自身の監獄体験と野村秋介の獄中生活を重ね合わせた「獄中十二年」である。野村の言葉が見沢をどれだけ励ましたか。そしてその死がどれだけ衝撃であったかがこの短編からはうかがい知れる。2021/11/30
けふたろ
1
「主観的な真実」はある種の狂気を伴わざるを得ないのかも知れない。2012/07/19
kazu_1984
1
なんという内容なんだろう。獄中作品集という言葉に惹かれて買った。背徳の方程式から始まり、獄中十二年まで、はっきり言えば、理解できない。でも、人が惹かれるものがあるのだろう。見沢知廉(みさわちれん)という人物。若くして投身自殺。三島由紀夫崇拝者。等と言えば、どんな思想の持ち主かわかる人もいるのだろうか?なんにせよ、私には少々難しい内容であった。2011/09/15
hikarunoir
0
全て広義の私小説と言えるが、獄中作かつ実体験に基づく意味では後半二編が表題に相応しく、著者の自死しなかった多元宇宙を思う。2015/03/02
さし
0
世に出てない作品をもっと読みたい。 表題作は大江健三郎っぽいなーとおもった。2011/08/21
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