内容説明
日本歌謡の流れを大河に譬えるなら、それは記紀歌謡群として湧出し、幾多の雅俗の風景を現出させながら、多様な雅俗の時と場を縫って、長い年月を絶えることなく豊かに流れてきた。本書に集められた24篇の論考は、その大河なす歌謡史上の要所における、それぞれの研究者の深くて新しい成果の発表である。内容は記紀歌謡・続日本紀歌謡・風俗圏歌謡・今様・早歌・中世小歌圏歌謡・近世歌謡、そして日本歌謡の一背景としても貴重な中国少数民族歌謡の研究にも及んでいる。また、国外における日本歌謡芸能研究の第一人者―フランク・ホーフ教授の『閑吟集』に関する最新の論考も収録した。
目次
『山家鳥虫歌』の民謡を辿る
「光仁即位前紀」の構成と童謡
紀七四・円大臣の妻の歌―「脚帯撫だすも」の表現を中心に
「大御葬歌」の場―その研究方法をめぐって
宣命型祝詞の成立
「宮人」考―和舞からの考察(その一)
神歌に見える「うれし」について―「たのし」との比較から
「駒の遊び」―『うつほ物語』から
院政期の催馬楽―顕昭の催馬楽関連記事をめぐって
『栄花物語』と“中古”今様〔ほか〕