内容説明
壱岐島で暮らす、ごくごく普通の人々。しかし、その誰もが語るべき物語を持っている。「医師の家」の運命に翻弄される人と、一家をとりまく人々。フィリピンからやって来た一人の女性の淡い恋の記憶。軍人の父を持つ少女の強く、美しい生き様。島に暮らす人々に残る戦争の記憶…。島の空気、懸命に自分の物語を紡ごうとする人々の力強さ、はかなさ、愛おしさ。すべてが溶け合い、ひとつの歌を紡いでいく。プラダ・フェルトリネッリ賞(プラダ主催・国際文学賞)を受賞した著者、待望のデビュー作!
著者等紹介
松嶋圭[マツシマケイ]
昭和49年長崎県壱岐市生まれ。精神科医。平成28年『Conversations with Shadows』にて、第3回プラダ・フェルトリネッリ賞(プラダ主催・国際文学賞)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Urahomot
2
長崎・壱岐島に暮らす人々の口述を伝承するための短編集。平成が終わろうとしているいま、戦中〜戦後を生き抜いた人たちの話は貴重だと改めて感じます。ぼく自身も、最近になって92歳の祖母から、戦中なぜ北京で過ごし、終戦直前に帰国したのかを聞かされ、祖母の逞しさに感動を覚えたばかり。身近な人の歴史を手繰ってみるのも面白いと思います。2019/01/06
nido
1
▼壱岐の人々の記憶を辿り、様々な出来事を浮かび上がらせる短編集。フィクションの体裁を取るものの大部分は実際の口承に基づいているとのこと。静かな雰囲気と相まって、いつまでも読んでいたくなりました。▼同じ出来事について語っていても語り手の主観が出るため、読み進めるうちに輪郭がはっきりしてくる部分、更に分からなくなる部分があります。その曖昧さが逆に心地好いのかも。▼装丁、土地の言葉、内容、どれを取っても身に沁みる。簡単に比較はできないけど、近年最も刺さった内の一冊です。2020/12/08
deerglove
1
祖父母との思い出は子どもの頃の記憶だから、大人になって辿り直すと思いもかけない色彩を帯びることがある。まして、本人だけでなく、父母や兄弟との関係、あるいは何らかの関わりがあった人たちにまで広げると、驚くべき世界が立ち現れる。これは壱岐に限った話ではないとは思うものの、やはりそこにしかない景色や人々の暮らしぶりに強く惹きつけられる。2019/07/27
あーさー☆
1
私の母の実家、すなわち私の祖父母宅がある壱岐。出てくる地名や方言も耳に馴染みがあります。母は結婚して島を出ているので私は壱岐に住んだ事はないですが、たまに遊びに行く島はとっても大好きな場所。 そこで暮らす人々の記憶を紡いだこの小説。読みながら光景を思い浮かべ、一緒に楽しくなったり悲しくなったり。ほんの少し前の事なのに、現代とは全然違っているそこにあった"当たり前"。そういった普通の人達の人生を記憶と共に辿り、引き込まれ、なんだか私の中の壱岐の血が喜んでいるような気がします。2019/01/07
ソフィ
0
島といっても、単に閉塞的な場所でもないのだなと思った。女性の扱われ方のひどさも、一人一人の実体験(たぶん)となると、響き方がまるで違う。貴重な記録。2019/06/12