出版社内容情報
書物の中と博物館の異物の間にしかない幻影の都市、アレクサンドリア。
その蜃気楼のような姿を追って遊歩する歴史紀行!
?池澤訳、E・M・フォースター『ファロスとファリロン』を併録
《アレクサンドリア。紀元前三世紀にアフリカの地中海岸に造営されたこの都は二千数百年に亘って次々に支配する民族を替えながら繁栄し、一九五二年に至って本来の主人であるべきエジプト人の手に渡った。/それまでの間、文化的なものはすべて地中海の北岸からあるいは東のアラビア半島からやってきて、エジプト人はただ住民に穀物を供することだけを求められた。/だから、エジプト革命で都市の相貌はすっかり変わり、それ以前の姿は文学の中にしか残らなかった。華麗で壮大な、言葉だけで築かれた大厦高楼の集合。古代の詩人や思想家に始まって近代ギリシャ語の詩人K・P・カヴァフィス、イギリス人であるE・M・フォースターとロレンス・ダレルの作品群。/ぼくは若い時にこの文学の都市に出会って夢中になり、いくつかの文章を書き、翻訳もした。気がつけばこれが相当な量になる。そこでこれを一巻に纏めようと思い立った。》││本書「はじめに」より
【目次】
Ⅰ アレクサンドリア小史
序/Ⅰ 動く宮殿のような柩車/Ⅱ 腫れた打ち身の灰色/Ⅲ 一般埃乃人の魯鈍に至りては/Ⅳ クレオパトラ・フィロパトール・フィラデルフス・フィロパトリスまで/Ⅴ しかしそれは暖かい詩的な日のことで……/Ⅵ 限りなく口論を続ける肥った鳥ども/Ⅶ 科学の諸分野を正しく関係づける体系の存在/Ⅷ 水売りが泉の歌をうたい、荷車の車軸のきしみが……/Ⅸ あまりに遠い神までの距離 その一/Ⅹ あまりに遠い神までの距離 その二/? 針の穴から息をしているようだ
Ⅱ アレクサンドリアを巡って──『アレクサンドリアの風』と『アレクサンドリア四重奏』
この都市の二つの像──あるいはオリエンタリズムの練習問題/都市の恋情 他
Ⅲ E・M・フォースター『ファロスとファリロン』 池澤夏樹訳
【目次】