内容説明
歌集副読本とは、歌集を味わい尽くすための助けとなる読みもののこと。本書では昨春、第一歌集を刊行した二人の歌人が互いの歌の魅力に迫ります。歌集を傍らに読前読後でお楽しみください。
目次
著者紹介―二人の歌人と二冊の歌集、それぞれの短歌十首
上坂あゆ美が『水上バス浅草行き』を読む(スピッツ事件;岡本真帆太陽説 ほか)
岡本真帆が『老人ホームで死ぬほどモテたい』を読む(黒いページに挟まれて;不和、それでも家族であること ほか)
巻末作品 上坂あゆ美の短歌とエッセイ(短歌「罪と蟻の巣」;エッセイ「でこぼこな信念」)
岡本真帆の短歌とエッセイ(短歌「あかるい花束」;エッセイ「短歌のけもの道」)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
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17
私と同世代の歌人が互いの歌集について語り合う。自分の解釈との違いや素敵な言葉との出会いを楽しんだ。著者の生き様や魂を想像するのが歌集の味わい方。好きだと信じるものさえあれば意外と人生は笑ってゆける。去るものは追わず、その事実を受け止める。いつか老人ホームに入るころには、私の中の全ての私から死ぬほどモテたい。刺青がないという刺青という表現の意味。亡き父の生き様を知るためにパチンコ屋へ。球を打ち返せなことを怖がるよりも、たくさんバットを振っていた方が短歌が生まれやすい。人の性別や実績でなく魂を見ているか。2024/03/26
ERIN
8
人生で初めて買った歌集が岡本真帆さんの「水上バス」だった。同時期に第1歌集を出版されたお二人によるお互いの読み解きはとても興味深く、「磨き抜かれた三十一文字の集合体」の良さをこれでもかというほど言語化してくれている。特に上坂さんによる「水上バス」の解説はそう!そうなのよ!と深く共感しながら読ませてもらった。私も何かこころを揺さぶられたとき、こんな風に言葉にしていきたいなと思う素敵な文章だった。2023/11/03
のりのり🍳ぽんこつ2𝒏𝒅
8
昨年、岡本真帆さんの『水上バス浅草行き』で短歌の歌集というものを初めて買った。限られた字数で情景や心情を感じ取れる世界に引き込まれたものの、初心者には正直「どゆこと?」な歌もあった。こんな自分にピッタリな、”歌集を味わい尽くすための助けとなる読みもの“なる本書が出たのでサイン本で買っちゃった。同時期に出た上坂あゆ美さんの歌集と共に互いの作品をどう感じたか、どう読んだかが読めるし自分も感じたことを見事に言語化してくれる気持ちよさも感じられる。上坂さんのは初めて読んだけどなんかブラックな感じの歌、クセになるね2023/03/08
きくらげ
7
『老モテ』の上坂あゆ美の読解が、そのまま歌集の上坂あゆ美その人という感じで、対他・対自が同じ目線で見られているように感じられてよかった。2023/09/06
このみ
6
タイトルで内容を説明するスタイル。どちらの歌集もお気に入りなので、手にした瞬間からわくわく。装幀のサイズ感が抜群で、イラストと箔押しの相乗効果でたまらなくお洒落。お互いの歌集を解説し合うその深度よ。「いい短歌は、たった三十一音という短い言葉で読者をその世界の虜にする」特に上坂さんの「歌集を読むとき、著者のプロファイリングをする気持ちで読んでいる」「私の一面的な読み方を宛てがうことはこの本に対する暴力なのではないか」という「己の愛と暴力性に真摯に向き合う」パンチのある文章に初手から喰らってしまった。良き。2024/06/18