内容説明
せかいはことばで満ちている。そう実感したのは、3才になった長男がいろんなものを見ては、まねて、伝えるようになったときからです。走る犬を見て、犬になりきる。風のちがいを感じわけて、手の動きを変える。ハラペコのとき、切ない顔でおなかをなでる。目の前に広がるいろんなものを感じ、見つめ、まねて、自分のからだで表す。それがもうすでに「ことば」なのだと知りました。この『せかいはことば』は、手話のある生活と、子どもたちの「ことば」の成長と発見を記録した育児まんが日記です。
著者等紹介
齋藤陽道[サイトウハルミチ]
1983年9月3日、東京都生まれ。写真家。文筆家。まんが家。都立石神井ろう学校専攻科卒業。陽ノ道として障害者プロレス団体「ドッグレッグス」所属。2010年、写真新世紀優秀賞(佐内正史選)受賞。2013年、ワタリウム美術館にて異例の大型個展を開催。2014年、日本写真協会賞新人賞受賞。著書に『声めぐり』(晶文社)、第73回毎日出版文化賞企画部門受賞の『異なり記念日』(医学書院)などがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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ぶんこ
39
とても面白かったです。聾者の両親と聴こえる2人の子どもたちの毎日が描かれていて、素朴な絵柄の漫画が齋藤家の大らかさを表しているようでした。とにかく子どもって凄い!親の心配をよそに、全身を使って言葉としての手話を使いこなしています。「だい、だい、だ〜い好き」の表現が最高。以前区の手話教室で習っていましたが、使う機会がなかったら、あっという間に忘れてしまった、残念。聾者の講師の先生が穏やかな良い先生で、懐かしいです。優生保護法が1996年まで存在したというのに驚きました。少しずつ日本も良くなってきているかな。2025/06/22
ぼりちゃん
31
きこえない親ときこえる子どもたち、4人家族の手話のある生活がたくさんの絵とともに描かれた育児まんが日記。子どもたちのことばの成長に人が持つ可能性の素晴らしさを感じ、ことばを大切にする齋藤陽道さんの感性の豊かさに驚いたのは『声めぐり』以来。 我が家も息子は所謂「CODA」で、音声日本語と手話言語の2つの異なる言語を行ったり来たりしている。それ故の苦悩はCODAにしかわからないものがあるだろうが、できるだけ息子を1人にしないようこれからも寄り添い理解しようとしていきたい。息子をヤングケアラーにしたくないけど、2023/06/29
宮崎太郎(たろう屋)
8
写真家の齋藤陽道さんが写真ではなく絵(マンガ)で、3歳と0歳の子供たちと家族で交わすことばや表現を著した育児日記。両親はろう者で子供たちは聴者である家族は主に手話で言葉を交わします。でもそれはどうやら手話には収まらず、からだを思い切り使ってことばを探し、そして伝えます。「大きい」「小さい」「おいしい」「嬉しい」「怒り」「悲しい」ことばは文字や音だけでなく世界のあらゆるもの捕まえていく。ことばから今までどれだけ感動をもらっていたのかをすっかり忘れてしまっていた。気持ちが豊かになる一冊。プレゼントにも。2022/10/05
まぁみ
7
ずーっとずーっと気になっていた本書。ゆったりとした気持ちで読むことが出来た。欲張ってサイン本を購入したけれど、何度も読みたいので、今後は特別扱いせず、ガシガシ頁を捲ることにします。良書の中の良書。一家に一冊。未読の方はぜひぜひ。2023/03/31
チェアー
7
子どもが育つ喜び、子どもから教えてもらう喜びが全面にあふれていて感動する。事象をみつめ、それに言葉をひとつづつ与えてゆく姿は素晴らしい。 幼児であっても、言葉の機微は大人が想像する以上に細かく理解して使っている。「大雑把にしか分からない」と思い込んでいるのは大人だけだ。 「ことば」は文字だけではない。手話はもちろん、表情や声やしぐさ、すべてがことばになる。相手に伝えたいという気持ちがあれば、どんなことをしてもことばになるんだな。 2022/07/23