出版社内容情報
美しい妹の身代わりに神に捧げられたのは虐げられた姉。水底の閉じられた世界で、神様と猫との穏やかな生活が続く、はずだった。
内容説明
三百年に一度、秋の満月の夜。湖に住む神に「一番美しい娘」を花嫁として捧げなければならない。そんな伝承がある湖のほとりの村で生まれた、双子の姉妹・宵と環。姉の宵には、生まれつき顔に青い痣があったため、妹の環が「神の花嫁候補」に選ばれた。誰からも愛される娘に育ち、その運命を哀れまれる環。逆に虐げられて育つ宵。だが、彼女たちが十六歳になったとき、環に恋をした男の策略で、実際に神に「花嫁」として捧げられたのは、宵だった。湖に沈められ、死を覚悟した宵。しかし彼女が水底が見たものは、美しい水色の瞳を持つ神様と赤子、愛猫がいる、閉じられた静かな優しい世界だった。そこで穏やかに暮らし始めた宵は、ある日水面の向こうに、助けを求めて自分を呼ぶ環の顔を見る。そして「村が水没する」ことを、それを仕向けたのが目の前の優しい神様であることを知り―。
著者等紹介
古池ねじ[コイケネジ]
2018年『木崎夫婦ものがたり 旦那さんのつくる毎日ご飯とお祝いのご馳走』(富士見L文庫)にてデビュー。2022年、「いい人じゃない」が第21回女による女のためのR‐18文学賞友近賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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よっち
21
300年に一度、湖に住む神に「一番美しい娘」を花嫁として捧げなければならない村で生まれた双子の姉妹。妹の代わりに神に捧げられた姉が水底の優しい世界にたどり着く物語。「神の花嫁候補」に選ばれた妹の環は周囲に愛され、痣のあるがゆえに逆に虐げられて育った姉の宵。しかし環に恋をした男の策略で、代わりに神に「花嫁」として捧げられてしまう宵。水底では思いの外穏やかな生活が宵を癒やす一方で、彼女を犠牲にした村がどんどん崩壊していく状況で宵が何を思うのか、そこがとてもこの物語らしく、宵らしい結末になっていたと思いました。2025/01/27
なみ
11
村で虐げられてきた顔にあざを持つ宵は、双子の姉である環に代わり、湖の神様に花嫁として捧げられた。 宵は死を覚悟したが、みなそこには、優しい世界が広がっていて──。 水鏡たちと暮らす中で、自分の考えや意志をしっかりと持ち、それを表明できるまでに成長した宵の姿が印象的です。 赫天の無邪気さと鈴がかわいさに癒されました。 火の国の話も気になります!2025/02/18
ごま麦茶
3
神様が国を治める世界。その村では、300年に1度、娘を神様の花嫁として湖に捧げる言い伝えがあった。村人から虐げられていた少女が優しい神様に愛されるお話。王道なような気もしますが、とても繊細で美しい文章で、まるでおとぎ話のような雰囲気。水鏡さまは優しくて穏やかな感じでしたが、神様らしい怖さや冷酷さにドキドキ(2つの意味で)。登場人物もみんな魅力的でした。2025/02/01
史
2
Excellent! この物語は紛うことなき人間の物語。理屈ではなく不合理で不器用で時に醜く不条理であり、だからこそ美しい。人間の業によって虐げられていた少女が生贄となり、神と結ばれ幸福を得ながらも、しかし元来の優しさは忘れずにさらにもっと美しく己を見出す。そして新しい未来を築いていく。確かに流行りのザマァや度が過ぎた仕返しではないことは不満に思う人がいるかも知れない。だけど、人間は誤るものであり、罪悪感を抱くものなのです。だからこそ安易な結末ではないこの物語は素晴らしいの一言なのです。面白かった!2025/04/03
みかん猫
0
虐げられていた少女が神様の伴侶になって幸せになり、虐げていた村は仕打ちを受けて反省するテンプレものだけど、感情の機微が丁寧に書かれていて良かった。 特に、生贄の少女を助けるために村で虐げていた少女を身代わりにして殺す男の冷徹さとその覚悟は単純な悪役にはならなくて良かった。最後這いずりながらも信念を貫いて殉じようとするところとか。まあ許せんけど。2025/01/27