目次
巣鴨の教誨師となるまで
「死の喜び」よりも「生の喜び」を
処刑の立ち会い
刑場への道
拘引記―二十八時間の記録
罪業感と戦争観
最後の晩餐
死刑囚の面会
死刑囚と仏教
遺書集
追補
著者等紹介
田嶋隆純[タジマリュウジュン]
1892(明治25)年1月9日、栃木県に生まれる。13歳で仏門(栃木市・満福寺)に入り、豊山大学(現・大正大学)で河口慧海に師事してチベット語とチベット仏教を学ぶ。1931(昭和6)年、フランスのソルボンヌ大学(パリ大学)に留学。’35年、フランス語で執筆した論文『大日経の研究』でパリ大学から文学博士号を授与される(翌年、パリで出版)。その後、栃木県の太山寺、高平寺、東京・小岩の正真寺の住職を務め、真言宗豊山派大僧正。また大正大学教授、同大学文学部長、図書館長、仏教学部長、真言学研究室主任、大学院研究室主任を歴任する。1941(昭和16)年夏、仏教界を代表して渡米し、各地で日米両国間の平和維持を懇請。戦後の’49年6月、米軍管轄下の巣鴨プリズンで2代目教誨師となり、戦犯死刑囚の助命嘆願運動に尽力。収容者から「巣鴨の父」と慕われる。’54年巣鴨の教誨師としての功績により法務大臣より表彰。’57年7月24日没(享年65)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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katherine
19
教誨師として、受刑者に寄り添った田嶋隆純氏が、刑死していったBC級戦犯とされた人たちの手記を編集した一冊。今日の平和がどれほどの犠牲の上に成り立つものなのかを忘れてはいけないと改めて思う。捕虜虐待などで起訴されたBC級の被告は、日本やアジア各地で裁判にかけられ、約千人が死刑を執行された事実をどれだけの人が知っているだろうか。上官の命令は天皇の命令と言われた旧日本軍の中で、下士官が上官に従うしかなかったのは想像がつく。無念ながらも、理不尽な時代を受入れ、日本の未来や遺された家族を思いやる姿に胸を打たれた。2021/11/18
ぴのこ
4
書店でたまたま手に取ってしまった。とんでもない本を買ってしまった。一ページめくるごとに横にいる人に目から汗が出てきてしょうがないと言い訳してしまった。巣鴨プリズンで死刑を待つBC戦犯者が新潟出身の若い子たちばかりなのに驚く。彼らの遺書を法衣に隠してまで遺族に届けた田嶋導師。自らも命を削り、彼らを見送る姿は私には不動明王に見えた。自分がいかにいい加減に生きているかわかる本。2021/09/21
ポレポレ
1
国家や上官に代わり理不尽を受け容れ、平和を冀いながら刑に処されるB級/C級戦犯者たち。彼らの求めに応じて仏道を説き、また助命嘆願に奔走したという著者。遺書遺品を遺族に届ける義務を怠った刑務所。……戦争は何も生み出さぬ悪でしかないと痛感させられる一冊。 ★★★☆☆2024/11/20