内容説明
「なりたいんだ!!平成のシャーロック・ホームズにな!!」と、主人公の工藤新一が第1話で宣言し『名探偵コナン』が始まったのは1994年。連載25年を迎える今年、新一はいまだ平成のホームズになれないまま、ついに平成が終わります。この本は『名探偵コナン』についての本であり、同時に「平成」という時代についての本でもあります。平成の最初期から連載が始まり、平成最後の年に「安室透ブーム」で知られる『ゼロの執行人』が興行収入90億円という映画史に残る大ヒットを記録した『コナン』を読み解くことによって、平成のわたしたちの姿を見出すことが出来ると考えるからです。『名探偵コナン』をヒントに平成という時代の真実を推理してみませんか。
目次
序章 『コナン』という事件
第1章 青山剛昌に見る、昭和
第2章 阿笠博士に見る、平成の社会
第3章 大怪獣ゴメラに見る、平成の映画
第4章 犯沢さんに見る、平成の憎しみ
第5章 毛利蘭に見る、平成の性
第6章 江戸川コナンに見る、平成の30年間
終章 『コナン』はどうやって終わるのか?
著者等紹介
さやわか[サヤワカ]
1974年生まれ。ライター、物語評論家、マンガ原作者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えみ
58
子供の頃に「楽しい!」と思って読んだ漫画が、こんなに大人になってもまだ「楽しい!」と思って読んでいる自分。あの頃は想像すらできなかった。漫画に限らず、TVアニメに映画。変わらずそこにあり続けている殺人ラブコメ、『名探偵コナン』!間違いなく私という人間の一部となっている。この本の面白いところは『名探偵コナン』から平成という時代を解釈しているところ。その時その時の時代背景によって殺人動機やIT機器活用、更には女性観等まで様々な変化を遂げてきた『名探偵コナン』の世界。一過性の人気ではない計算された凄さがわかる!2021/05/09
ころこ
33
平成と共に歩んできた世代にとって、空気のような時代を相対化することは困難です。そういう読者にとって、『コナン』は時代を映す作品だったといいます。『ルパン三世』は70年代から96年にかけて映画化は6作だったのに対して、97年からはじまった『劇場版名探偵コナン』はルパン三世とのコラボをきっかけに興行収入を増やし、現在22作なります。コナンが子供から成長しないことと類比的に、変化の乏しい時代の反映だと批判的に読むこともできますし、表層的に時代の変化に対応した優れた作品世界をつくったと読むこともできます。サブカ2019/04/03
hnzwd
23
PHSから携帯電話。インターネットの急速な普及といった時代を駆け抜けた名探偵コナン。今だと通じないトリックとか、、歴史を感じる。2020/01/11
昭和っ子
23
『サザエさんの昭和』という本を底本として、捉えにくいとされる平成を平成の始めから今も連載中の『名探偵コナン』で語る。不変の設定の中で時代の変化も反映させる、この話の「蘭」や女性キャラ達の誰もが、強く自律した人物であるのに、対するコナンになる前の新一や毛利小五郎は、日本男性を代表する「慢心した坊ちゃん」(『大衆の逆襲』オルテガ)であった。それは、平成の始めに「マドンナ旋風」が起き、政界の女性進出が叫ばれたにもかかわらず、未だ女性の地位が低いままだった平成日本の「現実世界の似姿(p.13)」である。↓2019/05/05
みこ
22
しばしばネタにされている作中での経過時間が一年未満という点を逆手にとって、作中で平成がいかに描かれたかを検証している。 去年から今年にかけて数多刊行された所謂「平成本」の一つ。ただ、他の平成本と一線を画するのがコナンで描かれているのは殺人事件と恋愛なので、テクノロジーの変化だけでなく、人々の心の機微の変遷について検証している。漫画は世相を映す鏡である。2019/09/01