内容説明
長崎市の男児誘拐殺害、佐世保市で発生した小6女児同級生殺害、高1女子同級生殺害をはじめ、全国の少年事件の深層と、その後を追った長崎新聞連載を単行本化。子どもたちを守るために、大人は何をすればいいのか。精神医学、小児医学、臨床心理学、教育学の専門家が男児誘拐殺害事件を検証した報告書も全文収録。
目次
第1章 深層凶悪少年事件(「男児誘拐殺害の教訓」;「少年事件遺族の今」;「佐世保児相の内部告発」;「佐世保事件読者の告白」)
第2章 検証男児誘拐殺害(本紙提唱 男児誘拐殺害検証会議が報告;男児誘拐殺害事件検証報告書)
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京都と医療と人権の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゃんしゃん
9
長崎県で三度起こった少年、少女による殺人事件を検証。犯人は発達障害、ASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)の罹患者だった。問題行動は幼い頃から見られたという。家族は子供に密着し弱点を克服しようとした。専門家また関係者たちは再発防止に向けて議論を進める。問題ありと判断した家族は閉鎖的にならず関係機関また地域、専門家に対して積極的に相談し支援を要請すること。そして周囲は率直に相談することが美徳とされる土壌を作っておくことが重要、他人ごとではなく周囲に対するあたたかい眼差しこそ大切なのだろうと思う。2017/08/13
misokko
5
長崎では被害者、加害者智に未成年という事件が3件も発生している。こちらの本ではなぜ事件を未然に防げなかったのかをもう一度徹底検証していた。新聞記事の書籍化なので、読者の反響も織り込まれており、我が子が加害者になるかもという親御さんの気持ちが子供を持つ親として、とても切なく感じた。事件当時にあった児童相談所のパワハラも挙げられていたが、行政の落ち度で事件が防げないのだとしたら非常に腹立たしい。2017/08/17
ねこっく
4
メインエディターは田中優作記者と坂本文生記者(当時)。長崎県では2000年代と10年代に計3回、残忍な少年事件が発生した。三つに根底する原因というものは存在しないのだろうが、なぜ起きたのか、どうすれば防げたのか、検証する新聞が地元にあるのは心強い。とりあえず、佐世保市では2024年10月20日時点で、10年周期で女子による凶悪な殺人事件が発生するー、というジンクスは起きていないので安心している。彼女達は今現在どこで何をして、何を感じながら生きているのだろうか。死んでいてもその死は明らかにされないと思うが。2021/11/25
JunTHR
3
新聞の連載をまとめたということもあり、読み応えとしては少し物足りないものもある。しかし地元紙が、相次いだ少年事件に真摯に向き合っているということがよく分かる。少年事件被害者遺族たちの二次被害的な苦痛は息がつまるようなレベル。 2003年の男児誘拐殺害(中1少年による4歳男児の殺害)、2004年の小6女児同級生殺害事件(傑作『謝るなら、いつでもおいで』の事件)という経過がありながら、2014年には高1女子同級生殺害が起きてるという悲劇的な連鎖。過去が活かされていない児童相談所の最悪な対応ぶりには絶望する。 2017/10/13
n75
3
佐世保はすっかり少年事件で有名になってしまった感がある。地域で次なる事件を防ぎたかったのにできなかったと盛んに言っていたように思うけど、なんか不自然に感じていて、少年事件に地域性とか関係あるのか?と思っていたのだけど、児相の杜撰な体制が暴かれていてなるほどそういうことだったのか…と、逆に地域で防いで行こうのシュプレヒコールが寒々しく感じられてしまった。しかし事件の当事者はすでに誰も成人を過ぎていて普通に暮らしているはずだけど、今後どのように生きていくんだろうか。2017/07/08