内容説明
舞台は鳥取県日南町！オオクニヌシとはいったい誰なのか！？再生神話ゆかりの地でおきた不可解な殺人事件。人間模様の裏に隠された真実とは…？
著者等紹介
松本薫［マツモトカオル］
鳥取県米子市生まれ。２０００年「ブロックはうす」で早稲田文学新人賞を受賞し、２００５年「梨の花は春の雪」が鳥取県西部で制作される市民シネマの原作に選ばれる。おもに鳥取県内の歴史や、ゆかりの人物をモチーフにした小説を書いている。『梨の花は春の雪』（２００６）、『ＴＡＴＡＲＡ』（２０１０）、『ばんとう―山陰初の私立中学をつくった男』（２０１７）で鳥取県出版文化賞を受賞。現在、鳥取県立高校国語科講師、ＮＨＫ米子文化センター「小説・エッセイ講座」講師（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しんたろー
191
松本薫さん初読み。鳥取を舞台にした事件は神話を仄めかす奇異な現象と父娘のドラマが交錯してグイグイ進み、面白く読めた。主人公の新聞記者・直哉と娘・春日の二人に、共感できたのも大きい。シベリア抑留の悲劇を判り易く描きつつ、丁寧に伏線を張って、社会性とミステリを融合する高い筆力を感じた。惜しむらくは、脇役に魅力的なキャラが多いのに、彼らの心情をもう少し読みたかったこと…それが重厚なら、松本清張ばりの作品になった筈…とは言え、歴史を絡めた推理小説として素晴らしく、日南町観光協会発行という地方発信も高く評価したい。2020/01/10
nobby
156
これはもう文句なく面白い秀作。どんでん返しや衝撃こそ無いものの、実に丁寧な正統派ミステリをじっくり堪能。鳥取県日南町が舞台だからこその“オオクニヌシ”伝承を思わせる殺人に序盤から惹き込まれる。そこにまた1992年というバブル崩壊期のリゾート計画や汚職などが見事に絡まりだす。物語はなかなか複雑な広がりを見せるが、順を追っての描写に置いてきぼり感はあまりない。何より細か過ぎるのではと感じられた人物背景が、終盤にはほぼ全て布石だったのに気付かされて脱帽！読了してタイトルに含まれる“X”の意味に至りまた拍手喝采♬2020/02/12
ちょろこ
144
秀逸ミステリ、の一冊。時は1992年、舞台は鳥取県日南町。不可解な殺人事件を発端に、主人公親子を取り巻く謎、Xとは何者か、全てがじっくり紐解かれていくミステリ。何これ、最高！と言いたい。謎を追っていく過程、父、娘の双方が至る場所で鍵となるものに出会う瞬間はとにかく興味を削がれることがない。何がどう転がり、真実に繋がるか…それこそ一気読みの面白さだった。この時代設定を余すことなく絡めた作品はそれこそエピローグまで秀逸。読後、自分はこのXの文字に様々な交差する想いを重ね合わせてみた。しみじみ…良かった。2019/12/19
🐾Yoko Omoto🐾
137
舞台は1990年代の鳥取県日南町。ある殺人事件を切っ掛けに、関係者たちの隠された過去や意外な真実が明らかになっていく、上質なサスペンスミステリ。土地のリゾート開発に絡む不動産業者や政治家たちの黒い駆け引き、ひいては自身の出自に関わる事実に直面していくのは主人公の新聞記者。彼と娘の視点を交互に用いることで、事件の見え方に角度をつけた描写が秀逸で、この地ならではの神話や陰惨な歴史もまた物語に膨らみを与えている。そして何より良かったのはエピローグで、物語の締めに大きな役割を担っていると感じた。とても面白かった。2020/04/04
sayuri
133
鳥取県日南町を舞台に繰り広げられるミステリー。分厚さに怯んだが先が読めない展開に結末が気になりぐいぐい読み進める事が出来た。オオクニヌシ再生神話、シベリア抑留の過酷な実情、町の三分の二を焼き尽くす大火事、轢き逃げ事件、遺体が移動する謎の殺人事件と、一つ一つの出来事は全く関連のない物に見えるが、全ての真相が明らかになる時、それは過去から現在までが1本の線で繋がり全てが交差されていた事に気付かされる。随所に張り巡らされていた伏線はラストで綺麗に回収され清々しい。ミステリーと言うより骨太の人間ドラマを堪能した。2020/03/02
-
- 洋書
- ¿Qué Pint…
