内容説明
50作にわたる各作品の要旨、映画に生涯を捧げてきた作り手たちの仕事に懸ける情熱、その映像、ドラマに音楽を付してきた作曲家たちの取り組み等を精緻にふりかえり、戦後日本映画、大衆娯楽映画の一大ジャンルとなった東宝空想特撮映画の全貌を改めてここに明らかにする。
目次
東宝空想特撮映画誕生前夜
東宝空想特撮映画の開幕期を飾る楽音 一九五四~一九五六
空想特撮映画の可能性を拡げる轟音 一九五七、一九五八
時空を超越する映画群を装飾する音調 一九五九
色彩感豊かなSF映画に活力を注ぐ奏楽 一九六〇、一九六一
空想特撮映画の百花繚乱の姿を包む響動 一九六二、一九六三
奇想天外映画に華美な光彩を加える音場 一九六四、一九六五
多彩なファンタジー映画をきらめかせる声調 一九六六~一九六九
伝統と新時代の到来の狭間にたたずむ吹鳴 一九七〇、一九七一
種々のジャンルの交錯を奏でる曲節 一九七三、一九七四
東宝空想特撮映画の変容と新天地を弾ずる管楽 一九八〇、一九八四
東宝空想特撮映画作品リスト一九五四~一九八四
著者等紹介
小林淳[コバヤシアツシ]
映画関連著述家。1958年10月、東京都生まれ。日本映画、外国映画、映画音楽にかかわる評論、文筆を手がける(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
98
『ゴジラ』以降、モンスターとの戦いを描く特撮映画は日本映画界の一大ジャンルだった。その歴史を振り返るのは同時代を生きた者として懐かしく、あの怪獣はどのような意図でデザインされたのか、今も耳に残る数々の劇伴音楽は誰がどのように書いたかを知るのは楽しかった。クレイジーキャッツやコント55号の映画などは聞いたこともなく、今から見れば明らかな失敗作も含まれているが、テレビの『ウルトラマン』ともども昭和の子供を育てたのは間違いない。ゴダール監督の訃報が伝えられたが、本多猪四郎と円谷英二こそ最大の巨匠だと再確認した。2022/09/26
keroppi
75
1954年から1984年までに公開された東宝空想特撮映画50本を取り上げ、その成り立ちと映画音楽について解説する。1954年は「ゴジラ」第1作が公開された年で、1984年は復活「ゴジラ」が公開された年だが、ここでは「透明人間」から「さよならジュピター」までが語られる。しかも小林正樹「怪談」や大林宣彦「HOUSE」や岡本喜八「ブルークリスマス」まで入っている。懐かしさとともに、その当時の映画に込められた想いを振り返る。YouTubeで予告編を見たりや音楽を聞いたりしながら読んだ。音楽が名シーンと共に轟いた。2022/07/04
kei-zu
21
東宝空想特撮映画のうち、ゴジラ映画を除いた諸作品の音楽について解説する。400頁を越える大著。取り上げられるのは1954年「透明人間」から1984年「さよならジュピター」まで。作曲家の紹介や音楽制作の背景も詳しいが、諸作品のストーリーや見どころまで解説されるのは嬉しい。他には取り上げられることが少ない作品(「大盗賊」「ブルークリスマス」など)も多く取り上げられており、かの名著「大特撮」を思い出しました(^-^)2024/10/09
おやぶたんぐ
4
ゴジラ以外の東宝「空想」特撮映画50選。音楽に力点を置いているのが売り。昨今はYouTubeで気軽に聞ける。以前に日本特撮の黄金期はやっぱり60〜70年代だったのではないかと記したが、実際には60年代に絶頂期を迎え、70年代には衰退の一途を辿ったということかもしれない…2022/12/16