感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小鳥遊 和
1
トッド理論の総説として質・量共に群を抜く出来。遠からず英訳されるだろう。核家族と英米民主主義、共同体家族と露・中の共産主義、直系家族と日独の高教育水準&対外拡張主義の関係は既に有名だが、初めて納得できたのはイスラム原理主義についてだ。「識字率・女性の地位が向上し伝統的価値が揺らぐ時イデオロギーが原理主義化する」との理屈で説明がつき、ピューリタン革命同様百年間は殺伐とするが徐々に脱宗教に至るという。最近著では現代米国の格差拡大を、人種多様性の受容が進み新たな差別としての教育格差が正当化された為だとする。2024/11/12
クジラ
1
本書では、歴史を振り返ったうえでの重要なポイントとして「多くの富裕層の出現」「出生率の低下と長寿命化・高齢化」「教育水準のアップ」「女性の教育面での台頭」「宗教問題」「従来型婚姻モデルの崩壊」といった諸課題を挙げ、正面から分析に取り組んでいる。トッド氏は、人間の行動を左右する要素として「経済は意識レベル」「教育は下意識レベル」「家族と宗教は無意識レベル」と分類している。こうした整理に基づき、現在社会の複雑な状況の解明に挑むものの、単純なものではないという。本書はトッド氏理論の集大成ともいうべき大著である。2023/06/28
Oki
1
確かにロシアや北朝鮮は、軍事力・武装を専門領域にしたが、それは人類全体に取って大いなる災い(リスク)ではないのか。 ドイツや日本が通商に専門化したのとは次元の違う害悪を世界にまき散らすのではないか。トッドにはこの感覚は全くないようだが。 またプーチンは人類学的基底に則った国民の統合に成功した...というのはちょっと違うような。 化石資源頼みの泥棒政治国家独裁者が原油価格の高騰に助けられた...という方が大きいような。2023/06/01