内容説明
100万人以上が欧州に移動し、人道的対応が大きく問われた2015年「難民危機」。グローバリゼーション下において「国境」が社会の内外に遍在化し、移動への明確な意志も、安住できる目的地ももたず、移動状態への“宙吊り”を強いられる民がますます増える中、「移動」をどう捉え直し、社会は彼らをどう迎えるべきなのか?人類学的視点からの刺激的な「移動」論。
目次
第1部(ヨーロッパの政治上のある瞬間;移動民たちに動機は存在するか?;新たなるコスモポリス;結論 バベル的世界の政治)
第2部(ヨーロッパにおける歓待とコスモポリット性、その今日と明日)
著者等紹介
アジエ,ミシェル[アジエ,ミシェル] [Agier,Michel]
1953年生。人類学者。フランス・社会科学高等研究院(EHESS)教授・研究主任、および開発研究所(IRD)特例クラス研究主任。関心領域は、人的グローバル化、難民、都市の周辺生活者。西アフリカおよびラテンアメリカでのフィールドワーク調査を経て、アフリカ、中東、ヨーロッパにおいて、移民・難民に関わる個人・共同研究に携わる
吉田裕[ヨシダヒロシ]
1949年生。早稲田大学法学部教授。早稲田大学大学院文学研究科仏語仏文学専攻修士課程修了(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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孤望
4
シンプルな名著。移動民とは、出発しても到着することがない人々、終わりなき追放状態、常に境界上に留まり続ける、仮止め、彼ら自身が境界である境界的人間。彼らこそが、暴力的な国境での経験こそが、「平常性のコスモポリティスム」という、間の世界を生きる人々が増殖し続ける現代の新しい起点である、真なるコスモポリティスムである、という宣言。歓待という新しい権利を夢見る書でもある。枝葉だけれど、贈与が、与えると返すの間に時間差があり、しかし、その時間差、その時間こそが関係を育むのである、という指摘は慧眼で重要だと唸った。2020/04/04