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出版社内容情報
現代社会で失われつつある、沈黙と静寂の豊かさを再発見する
「静寂(音の不在)」と「沈黙(言葉の不在)」を実践し、その豊かさや恩恵を味わう習慣が失われつつある現代社会。その性質上、行政や司法、教会文書の記録も少なく、痕跡が残らず、歴史家にとって把握するのが困難な「静寂」や「沈黙」を、これまでも、においや嗅覚、音と聴覚的感性など、捉えがたいものの「歴史」に挑んできた“感性の歴史家”が初めて描き出す!
カラー口絵8頁
アラン・コルバン[アランコルバン]
著・文・その他
小倉 孝誠[オグラコウセイ]
翻訳/解説
中川 真知子[ナカガワマチコ]
翻訳
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
83
今や、稀になった静寂と沈黙。それらの美しさを文学作品、芸術、自然、歴史を交えて考察しています。「自然の静寂」は思わず、芭蕉の「閑さや 岩にしみ入る 蝉の声」という句を思い出さずにいられない。かそけき音の芯にある、染み入る静けさが迫ってくるからだ。そしてイエスの父ヨセフの沈黙についての考察が清廉。今までのヨセフへのイメージを変えそうです。しかし、「憎悪による沈黙」を述べた部分は、見限りをつけるととことん、冷酷になる自分の性格に色々と思い当たる事が多すぎて居た堪れなくなりました。2019/05/30
kenitirokikuti
12
毎日新聞2019/2/17 木村俊二評を読んで▲silence 静寂ないし沈黙は音や声の不在ではなく、祈りや思考、魂の言語。思考は沈黙のなかでこそ働き、言葉は思考を中断させる/産業革命後、都市は騒音で満ちる。その騒音が気にならなくなる時期が過ぎると、反対に雄鶏や犬の鳴き声にさえうるさく感じる事態が生じる。そして歴史上初めて静かな個室なるものが現れる。かつて、待合や乗り物の中では見知らぬ間柄でも隣り合えば会話するのが礼儀であり普通だった。いまは沈黙を守らないと無作法である。…だが、大音響を楽しむ場も多い。2019/02/18
うえ
8
「沈黙の探求は多種多様で…普遍的である。全人類史に浸透しているのだ。ヒンドゥー教徒、仏教徒、道教信奉者、ピタゴラス主義者、もちろんキリスト教徒…それ以上に正教徒は、沈黙の必要性と効用とを感じてきた。そのうえ沈黙は聖なるものの領域、宗教の領域を超えて必要なのである。…西洋において沈黙の歴史の根本にある、こうした対象を完全に無視することはできない。16世紀、17世紀…沈黙はこの時代、神とを結ぶあらゆる関係の必須条件である」著者はボシュエやヴァニタス、シャルル・ド・フーコーの「砂漠」を援用しつつ論じていく。2020/09/21
miaou_u
8
読売新聞での、美しい本だという書評で興味を抱き、入手。静寂とは、かくも美しいものなのだと思わざるを得ない。アラン・コルバンが引用して網羅する、静寂、沈黙に纏わる古今東西の文学、哲学、芸術、歴史、全てのキーワードが、ただただ美しいのだから。アラン・コルバンの知の泉の中にある静寂と沈黙が溢れ出す考察に、ほぅ、、、っ、と圧倒されるさまは、まるで鹿島茂先生を彷彿とさせ、思わずふふっ、と笑みが零れる。かつての詩人が描いた美しい静寂の時代は、目に見えてもう二度と戻らないだろうが、心に描く静寂の時間を、大切にしたい。2019/03/24
吟遊
7
美しい画集のような本。すぐれた見識、引用句の簡潔さ。幅の広さ。2019/07/08