出版社内容情報
はしがき
ことし創立八十五周年を迎える一橋大学には商法講習所という一時期があった。
森有礼の私塾として発足し、東京商工会議所の前身である東京会議所の管理時代をへて、東京府が所管した時期が六年、名義だけは府営であった時代が約三年あつた。
創設当初から、その経費を、江戸時代からの市民の共有金でまかなってきたなどのいきさつがあったので、旧東京府文書には、商法講習所関係の、めずらしい記録が十冊ほどみられる。
創設当時のものはないが、内容によってはそれ以前にさかのぼるものもあり、年次的にいって、明治九年から十八年にまたがっているから、東京府所管時代から、農商務省の直轄になるまでの事情は、大体においてあきらかにされる。
商法講習所については、「一橋五十年史」(大正一四・九刊)や「一橋専門部教員養成所史」(昭和二六・一二刊)にも一応の記述があり、また、「青淵先生六十年史」(明治三三・二刊)や「青淵回顧録」(昭和二・八刊)についで刊行された「渋沢栄一伝記資料」の二十六巻(昭和三四・七刊)には、旧東京府文書からの転載も多くみられるけれども、その全貌を知るには不十分である。
さいわい、当館に残されている商法講習所関係の記録文書を中心に、府会記録やその他の史料によって、一橋大学の前史を、よりくわしくたどり、明治初年における商業教育の実態や商業教育に対する為政者の考え方などをあきらかにすることができれば、当時の教育事情の解明にも役立つであろう。あえて、商法講習所を単独でとりあげたゆえんである。
http://www.soumu.metro.tokyo.jp/01soumu/archives/0604t_kiyo08.htm