内容説明
ヴァーグナーの著作や作品に色濃く流れる反ユダヤ観は、ヒトラーの思想形成に多大な影響を与えた。ナチスの聖典であり、現在もドイツ国内では出版が禁止されているヒトラーの著作『わが闘争』の原文とヴァーグナーの主張を比較考証し、その関係を明らかにする。ヴァーグナー芸術の暗部を白日の下にさらした前著『ヴァーグナーと反ユダヤ主義―「未来の芸術作品」と19世紀後半のドイツ精神』の続編。
目次
第1章 ヴァーグナーの反ユダヤ観形成に至るまで
第2章 ヴァーグナーの反ユダヤ思想とナチズム(「音楽におけるユダヤ性」と『わが闘争』;ヴァーグナーの「再生論」と『わが闘争』)
第3章 キリスト教の信仰にひそむ排他性と反ユダヤ主義
第4章 ヴァーグナーとヒトラーの反ユダヤ主義的態度における類似性
第5章 ヒトラーにとってのヴァーグナー
結び
著者等紹介
鈴木淳子[スズキジュンコ]
1966年福岡県生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科卒業。東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻(比較文学比較文化研究室)博士課程修了。学術博士。現在、法政大学および関東学院大学でドイツ語非常勤講師を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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札幌近現代史研究所(者。自称)
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ヴァーグナー(ワーグナー)の反ユダヤ主義、反ユダヤ思想とナチズム、ヒトラーら第三帝国期の人種主義等の思想の関係を深く掘り下げようとする書籍。類書に邦訳があるものではヨアヒム・ケーラー著の「ワーグナーのヒトラー 『ユダヤ』に取り憑かれた預言者と執行者」があるが、これに比べると、ドイツ語原文や出典の明記が豊富な注釈で出され学術論文に近い。ワーグナーの反ユダヤ主義を単なる「ナチスやヒトラーに利用されただけ」とするような軽薄な理解と無関心から、両者は不可分であり密接性が高いという趣旨は説得力に富む。推薦図書。2020/07/15