出版社内容情報
現代のイノベーションは、新素材の開発と先端技術の実用化によって支えられている。しかし、その輝かしい成果の背後には、プラスチックごみ等の廃棄物の増大、さらには膨大な二酸化炭素排出という問題が生じている。この相克を克服しうる新たな産業基盤を形成する経済システムこそ、サーキュラーエコノミー(循環経済)である。
循環経済の営みは、しばしば生体の血流に喩えられる。製品を生み出す産業が「動脈産業」であるなら、使用済み製品を回収し、再販売・再加工によって再び社会へ送り出す産業は廃棄物処理業者、金属スクラップ業者、古紙回収業者、プラスチックリサイクル業者等の「静脈産業」にほかならない。静脈産業は、いまや資源循環の主役へと躍り出つつある。
この変革を現実に進める有効な手段の一つが、M&Aよる静脈産業の再編と連携である。地域密着型で中小事業者が多数を占める静脈産業には、規模への集約と効率化が急務であり、その実践的アプローチとしてM&Aは重要である。
(はしがきより)
【本書の内容】
・静脈産業(回収・リサイクル側)のM&Aに関わる法制度と実務対応を体系的に解説した希少な本格専門書!
・静脈産業の状況、再編の必要性から、廃棄物処理法・再資源化事業等高度化法・各種リサイクル法等の解説だけでなく、M&Aを行う場合の許認可の承継問題、デューデリジェンス、契約作成上のポイント等の実務上の課題まで詳説!
・実務の流れを理解できるケーススタディ(意思決定/DD/契約交渉/PMI)を収録!
【目次】
第1章 循環型社会の形成と本書の意義
1 循環型社会・サーキュラーエコノミー(循環経済)とは何か
2 M&Aを通じた動静脈連携および静脈産業の再編の必要性
3 本書の位置づけ
第2章 静脈産業の概観
1 静脈産業とは
2 静脈産業の法体系と業界構造
第3章 廃棄物処理法の法制度と実務
1 「廃棄物」とは何か
2 廃棄物処理の基本
3 廃棄物処理業等の許可
4 資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律に基づく新制度の導入
5 不法投棄等に対する対応
第4章 リサイクルの法制度と実務
1 「循環経済(サーキュラ―エコノミー)」におけるリサイクルの意義
2 循環型社会形成推進基本法に基づく資源リサイクルの仕組み
3 リサイクルに関する法制度
4 リサイクル法制度に関する最近の議論(太陽光発電設備リサイクルに関する検討状況)
第5章 動静脈連携に向けた企業経営とM&Aの活用
1 静脈産業の動向
2 静脈産業のM&A動向
3 動静脈連携に向けた企業の課題
4 課題解消に向けた企業経営とM&Aの活用
5 代表的事例
第6章 静脈産業のM&Aにおける実務上の留意点
1 静脈産業の特徴
2 デュー・ディリジェンスにおける留意点
3 法務DD
4 その他のDDにおける留意点
5 M&Aのスキーム検討時の留意点
6 株式譲渡契約等の作成における留意点
7 PMIにおける留意点
第7章 ケース・スタディ
1 はじめに
2 Y社の現状と売却検討の背景
3 X社の経営戦略と意思決定
4 X社による意思表明書の決定等
5 DDの実施とこれにより浮上した論点
6 契約交渉・締結・クロージング
7 PMI戦略と総合実務



