内容説明
2014年8月3日、ダーシュ(過激派組織IS、イスラム国)の侵略を受けた中東の少数民族、ヤズディ。土地を奪われ、家族を殺害され、女性は性的暴力を受け、山に逃げ込んだ人々は恐怖と絶望の中、次々と倒れていった。30余組の証言と、現地で共に生活をしながら撮り続けた写真で照らし出す、ヤズディの記憶と未来。
著者等紹介
林典子[ハヤシノリコ]
国際関係学、紛争・平和構築学を専攻していた大学時代に西アフリカのガンビア共和国を訪れ、地元新聞社「The Point」紙で写真を撮り始める。以降、国内外の社会問題やジェンダー等に焦点を当て、写真と言葉でひとりひとりの生と記憶を伝える活動をしている。2012年DAYS国際フォトジャーナリズム大賞1位、2013年フランス世界報道写真祭ビザ・プール・リマージュ「報道写真特集部門」Visa d’Or(金賞)、2014年NPPA全米報道写真家協会Best of Photojournalism「現代社会問題組写真部門」1位、三木淳賞など受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
PEN-F
33
太陽が地を照りつける。異国の何処かでまた血生臭い風が吹き、温度計の上昇は飢渇を重ねて子供達の苦悩を死に追いやった。投げ出した年月でさえも、今では行き場の無い戦慄と無関心の風潮が、安らかな生活を望む彼等の叶う事無い心理を生む。不毛の大地を不意な欲望が作ってしまった現実。2021/09/20
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
11
ヤズディとは、イラク北西部で暮らしていた少数民族。2014年8月、ダーシュ(過激派組織IS)に侵略を受けました。イスラム教に改宗するか、死を選ぶかの選択しかなく、わずか数日で、数千人の人々が殺されたそうです。著者は行動を共にし、30組以上の証言と撮りつづけた写真を載せています。破壊された村・避難所・ライフルを持つ少年…。2020/10/26
ののまる
9
こういう少数教徒がいること自体、ナディアさんがノーベル平和賞を受賞するまで知らなかった。2018/12/12
チェアー
5
ヤズディという少数民族についてはまったく不知。 ISに蹂躙され、もう日常には戻れなくなってしまった。 その理不尽に直面して、嫌でも強くならざるを得なかった人々。ミャンマーもそうだが、平穏な日常はあっという間に崩れ去る。一度崩壊した日常はなかなかもとには戻らない。 同じ人間に生まれてきたのに、彼らはすべての権利を失って生きることを強いられている。 写真のインパクトよりも、その事実をはじめて知った衝撃のほうが大きかった。2021/04/11
su-zu
4
イラクとシリアの国境近くの土地にあるヤズディという少数民族が、近年のシリア内戦やIS(本書ではダーシュと表記)の勢力拡大に伴い、自らの土地を追われ、様々な悲劇にみまわれている。この写真集は、とくに大量虐殺がおこなわれた2014年8月を生き抜いた人々の記録だ。写真と巻末にインタビューが収録されている。写真はとても静謐だ。哀しみと祈りに満ちてはいるが、悲劇の後とは思えない静けさ。しかし、巻末のインタビューとともに見ると、その静けさが胸をえぐってくる。現在進行形の戦争の悲劇を、知らねばならない。2017/05/14