内容説明
かつて大陸では娼妓が中国人、ロシア人に身請けされ囲われることを“仕切られる”と呼んだ。日露戦争の裏側、極東ロシアの港町で元娼妓が生きた愛と争闘の日々。これは異色のヒロインが綴るハードボイルド悪漢時代小説。
著者等紹介
高城高[コウジョウコウ]
1935年、北海道函館市生まれ。東北大学文学部在学中の1955年、日本ハードボイルドの嚆矢とされる『宝石』懸賞入選作「X橋付近」でデビュー。卒業して北海道新聞社入社後も十数年間、『宝石』誌などにハードボイルド作品を発表した(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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NAO
57
『ミリオンカの女』続編。家庭内でも、家庭外でも、個人的な騒動が続くお吟。日露戦争が始まりウラジオストクも落ち着きを失い、大黒柱を失った商会のため、女だてらに中国へ日本へと駆け回る。一度娼家に身を置き「仕切られ」てしまった女は関わった男を不幸にする、とはあまりに悲しい考えだが、その自立心の強さこそが彼女の美しさの源でもあるのだろう。2020/08/24
Roko
27
物語の中盤で日露戦争が勃発し、ウラジオストクにいた日本人の多くが日本へと帰ってしまったのですが、戦争が終わると少しずつ戻ってきたということは、この町には仕事があり、魅力的な場所だということだったのでしょう。 ペトロフ照会の部長になったお吟は、大豆の貿易をするために、陸路ハルビンへ向かいます。ここは清国(満州)なのですが、実際にはロシア人が牛耳っている場所で、怪しい人たちが大勢登場します。でも、ひるむことなく交渉を続けるお吟です。2024/11/12
moonanddai
7
個人的には正岡子規関連のあとに日露戦争と続き、何となく「坂の上の…」のような雰囲気になってきました。とは言え、これはロシアから見た日露戦争で、ウラジオを含むロシア国内の民衆暴動や、従軍記者不在の前線における壮絶な殺戮戦など、「坂の上の…」では、「海戦」の方に目が行って、こちらはあまり触れられていなかった…??(よくは覚えてませんが)主人公は函館に戻ってきましたが、このままですと「革命」の時代に入っていくことになりそうです。2020/03/26
田中峰和
2
仕切られるとは廓言葉で、娼妓を見受けして妻や妾にすること。ここでは、大陸で中国人やロシア人に身請け遊郭の娼妓たちの仕切られた後の人生が描かれる。日清戦争後のウラジオストク、主人公のお吟はロシア人商人の養女として遊郭から身請けされ、今や商売に全霊を傾けるキャリアウーマンだ。ロシア海軍将校との淡い恋、日露戦争の勃発と彼の戦死、かつての恋人からの嫌がらせ、命の危険も伴う匪賊相手の商売など、次から次と起こる数奇な運命は読者を飽きさせない。4か国語を操る異色のヒロインは、ついに函館の支店を任され、故郷へ錦を飾る。2020/08/03
冬樹
0
ロシアから見た日露戦争については全然知らないので興味深く読んだ。またロシアといってもアジアに近接しているので味わいの違う文化が入り混じる感じが面白い。お吟のように経験を糧にして強く生きたい。2023/04/17