感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
門哉 彗遙
6
カバーも帯もないシンプルな装丁は、この歌集にふさわしい。松村さんの歌は、よけいなものが削ぎ落とされていて、シンプルなスナップ写真のようだ。目には入っているのだけれど認識せず、意識のどこかに埋もれていたものを、言葉に歌にしてくれているから、とても共感できて楽しく読めた。 【付箋をつけた歌の中から三首】 沿わせつつ刃を動かせば親指はすでにあじわう梨の甘みを▶︎ 美しき二枚の翅のはばたきの揺れるイランとサウジアラビア▶︎ ドップラー効果のように翳りゆく時間の奥にひぐらしが鳴く2025/08/08
アンパッサン
3
リフレインしたり、まったく違うところから飛んできたり、見えてるはずなのに気づいていない音やにおいや空気感、素朴さだったり、古典的な素養が滲んだりして、気づきってこうであると提示してくれる一冊。いちばんリスペクトしている歌人。大和郡山にふれてくれていて、ますます親近感を抱いた。これでまた目をあたらしくしてもらったので、挫けず歌を詠みたいと思う。2025/09/30