内容説明
友人S氏に頼まれて、文化人類学者はベトナム・ラオス800キロの旅に出た。国家も民族もない、神話が現実の一部だった時代、そこに生きた懐かしき人々の記憶をたどって。
目次
1 ハノイの日本人
2 千年の都ハノイ
3 ベトナム四千年の歴史
4 「はじまり」のプロデュース
5 天空のア・フウ少年
6 行ったり来たり、精霊たち
7 神話の里ナーノイ村
8 ディエンビエンフーのウワサ話
9 ひょうたんから人、人のワキにカメのうんち
10 ゴム林とクワ畑
11 声の文化を生きる
著者等紹介
樫永真佐夫[カシナガマサオ]
1971年兵庫県生まれ。2001年東京大学大学院総合文化研究科博士課程単位取得退学。博士(学術)。専門は文化人類学、東南アジア民族学。第6回日本学術振興会賞受賞(2010年)。現在、国立民族学博物館教授、総合研究大学院大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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gorgeanalogue
11
歴史の中で時に改変され捏造される民族のさまざまな「はじまり」と「つながり」を人類学者がベトナム~ラオスの横断小旅行の中で過去と近過去、そしてコロナ禍とSNSの現在を錯綜させながら語る。最後で明かされるネタバラシにも似て、「神話」はアナクロニ―の中で太古の人物を親密な友人のように現在の時制で語る「語り口」のことなのだな。そもそもなぜ著者が黒タイに魅せられたのか、とか神話の媒体でもあったはずのモーラムとか、ほかにも語ってほしいこともあったが、ルアン・パバン旅行が楽しみになってきた。本文用紙の質感がいい雰囲気。2024/05/09
takao
3
ふむ2024/05/07
Myrmidon
2
うむむ、それなりに面白いが、自分がもっとインドシナ地域に明るければもっと面白かっただろう的な本。文化人類学、東南アジア民族学を研究する筆者が、ベトナム・ハノイからラオス・ルアンナムターへの10日間の旅路を紹介、各所でその地の現在と過去、神話伝承と歴史的経緯などが語られるが、巨視的な話と筆者の個人的体験が代わる代わる述べられ、見通しの良い紹介文というよりも「ぶらり思い出紀行」といった風情。勿論、この種のディープな文化人類学は筆者の個人的体験を捨象すると嘘になるので、見通しが悪いことにも意味はあるのだろうが。2023/12/19
Arihiro Minoo
0
紀行文のようでありながら、著者(樫永さん)のこれまでのフィールドワークの成果が所々に散りばめられていて、とてもためになった。自分も著者に連れられてベトナムからラオスに陸路でゆっくり旅をしながら、その土地の話を教えてもらっている気分になる。 この地域は、様々な少数民族が暮らしているのだが、それぞれの「くに」のはじまりの神話がどういったものなのかを、さらっと学べるところがよい。2024/03/19