出版社内容情報
結核性股関節炎のため病床で詩を作り俳句を詠んだ毛錢。その35年の生涯(1915-1950)を描く決定版評伝。闘病生活の中にあって、山之口貘、火野葦平、原田種夫らとの交流をはかる一方、故郷水俣には深い愛着を抱き続けた。「出発点」という詩《美しいものを/信じることが、/いちばんの/早道だ。/ていねいに生きて/行くんだ。》が示すように、広い視野と土着的なものへの親和感をもとに紡ぎ上げたことばが胸を打つ。生と死を真摯に見つめつづけた詩人の世界を訪ね、詩作品の時代背景を丹念に読み解く。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hatohebi
4
筆者が熊本の俳誌『阿蘇』や『熊本日日新聞』に連載した評伝を単行本化したもの。詩人・淵上毛銭の生い立ち、青春遍歴、詩人としての活躍、死までを、平易だが共感を込めた静かな文体で綴っている。個人的には戦争との関わりが気になった。本人は結核で出征できなかったが、弟は中国戦線に送られ、それを思う詩も書いている。「祖国は/栄え輝く」(「家系」)というような表現や、吉本隆明が指摘した「農本ナショナリズム」的な志向をどう捉えるか、は現代の読者として無視できないだろう。筆者は決して贔屓の引き倒しに陥ることなく、「病床詩人→2022/05/04