内容説明
仕事と家庭を行き来しつつ詠まれた気鋭の著者による第一歌集。
目次
1(花に額ずく;ログイン;欲の煮くずし方;蟹の缶詰め;音のない火事;夏富士;冬樹の枝;細く細く;お酒と海と;春の山)
2(ハッピーマンデー、そして火曜日;弥生朔日;ある朝あるタ;車窓;ハスキー)
3(水張田の季節;春の花殻、夏の蕾;夏風邪;仰ぎみる;立山行;出願の朝;静物;あそび;モノレール)
4(cards;時間;夏の道;手を振る;御在所;追う才;安全装置;そして、近ごろは;フーコーの振り子)
著者等紹介
柳原恵津子[ヤナギハラエツコ]
1975年東京生まれ、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程中退。2005年に歌作を開始、りとむ短歌会を経て、未来短歌会陸から海へ欄に所属。白の会などに参加。未来評論・エッセイ賞2016。第八回現代短歌社賞佳作。非常勤研究員として研究所勤務(専門は日本語史)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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あや
23
読むのに時間がかかってしまった歌集。決して難解なのではなく、ひとつひとつの作品をちゃんと受け止めようと思ったら読むのに時間がかかってしまった。この1冊をひとことで表現するなら帯文の黒瀬珂瓓さんのひとこと「慧眼の研究者として家族の一員として」のお立場からさりげなくかつ適切に日常を切り取り日記のように誰かに宛てたお手紙のように描いていらっしゃる所にとても心惹かれ共感致します。ページに栞を挟んだ歌多数で、のちほどコメント欄に引用致します。2023/10/15
qoop
5
生活の由無し事を素直に詠んで心掴まれる歌多し。正面突破された感じ。/まともなるのは猫ばかり「ママだってあっちの人」の「あっち」って何?/脱皮した皮をシェアするような愉快ストッキングを娘に貸せば2023/08/27
yanagihara hiroki
1
第一歌集。表現は鈍く、テクニカルでも、気の利いた比喩もない。この世界の実相に新たな切り口を示してくれるような力を文学性と呼ぶのなら、その要素は薄い。詠まれる喜びも悲しみも、ありふれたものにすぎない。 しかし、それでも見過ごすことはできないのは、この歌集が中途半端な存在として生きる我々の寄る辺なさを目を背けずに描こうとしているからなのかもしれない。そしてその一点においてこの歌集には、確かに存在意義がある。その鈍重さとは即ち、賢しらな我々が表現に溺れてつい軽視しがちな誠実さであることに、強く勇気づけられる。2023/06/29