感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
143
老漁師を世話するboyマノリンは12歳の少年と見なされ、作者の生前に製作された映画でもその年頃の子役が演じていた。従来の訳本でも少年と訳されてきたが、内容からして20歳前後ではとの意見も根強かったという。初めてboyを22歳の若者とした本書を読むと、繰り返し「彼がいてくれたら」とつぶやく老人の思いが強く伝わってくる。ラストで鮫との戦いに敗れ帰港した老人に「また一緒に漁に出よう」と語りかけるのは、舟に乗り始めたばかりの少年ではなく成人男性の言葉だ。老人が敗れた海との闘いに、次は若者が参戦する決意表明なのだ。2022/11/19
ここぽぽ
22
有名な本を気楽な気持ちで手に取った。訳者の解説が深くて長く勉強になった。軽く読めると思ったけれど、色々な解釈があって驚く。海の情景が生き生きとしていている。老人の漁への思い、魚や自然への愛、若者への親愛、どの描写も素晴らしくて、研ぎ澄まされていく感覚で読めた。くたびれていく囚われた魚の様は痛々しい。2024/08/13
みゆき・K
20
図書館の返却棚で見かけたので借りた。新訳版。旧訳を読んだのは随分前。違いはマリノンの年齢。翻訳者の解説を読んで、20代の青年説に納得。この描写、釣り好きな方にはたまらないだろうな。何度か家族の釣りに同行したけれど、じっと待ってるのが苦手な私には苦痛で仕方ない。本作の描写は同じ気持ちを味わわせてくれる。読んでると退屈で眠くなるのは、実際の釣りと同じ。本編よりも面白いのは、66ページに及ぶ翻訳者の解説。旧訳既読の方は解説から読むのもありだ。名作と言われる所以がよく分かった。再読したい。2023/08/24
テツ
20
日本ヘミングウェイ協会会長による新約。大好きなお話なので楽しく読めました。最も興味深いのは旧約では12歳くらいなイメージだったマノリンが青年として描かれていること。確かに老人の世話をする様子や、孤独な海の上で彼を思い出す描写などを改めて読んでみると、このくらいの年齢がしっくりくる気がします。誰も目撃することのない孤独な戦い。勝利も敗北も関係のない自らの誇りのためだけの戦い。それをやり遂げる強い魂は老人から青年へと受け継がれていく。人が紡ぐのは遺伝子だけではなく、人が何かを伝えられるのは言葉だけではない。2022/11/30
真琴
13
新潮文庫の従来の訳では「a boy」を少年。新訳では「若者」としている。サンティアゴのマノリンへの依存の様や、マノリンのサンティアゴに対して尊敬の念を込めて慕っている様を考えると「若者」としたほうがしっくりくるのかな?硬派でストイックな印象を受けました。話の軸は変わらなくても、年齢設定を変えるとこんなに受ける印象が違ってくるのですね。2022/11/30