内容説明
坂口恭平、第二の誕生。初のパステル画、はじめて出会った風景。126作品掲載(実寸)。書き下ろしエッセイ「畑への道」。全点作品解説。
著者等紹介
坂口恭平[サカグチキョウヘイ]
1978年熊本県生まれ。早稲田大学理工学部建築学科卒業。作家、建築家、絵描き、歌い手。東日本大震災後の2011年5月、新政府総理大臣就任を宣言。自身の携帯番号を公表し、希死念慮に苦しむ人々との対話「いのっちの電話」を続けている。2004年に写真集『0円ハウス』(リトルモア)を刊行。美術家として、カナダのバンクーバー州立美術館にて2006年に個展を開催後、現在は展覧会を各地で開催する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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2月11日が誕生日だけど気にしないでね寺
50
今年2020年は新刊本の当たり年ではないかと思っているのだが、今年の収穫のひとつは間違いなくこれである。あの坂口恭平が描いたパステル画の画集。表紙からしてキラキラとした光を感じさせる。題材は坂口恭平の住む熊本の風景だが、たいがいの人が見た事があるような景色が美しく描かれていて、ページをめくりながらしばし見とれる。中にはいかにも九州らしい風景もあるが、どれも自分の記憶にある世界で、思えばこんな綺麗な世界を自分は見てきたのだと気付くと、自分の人生も満更ではなかったような気がする。本当に綺麗な画集。お薦めです。2020/11/15
遠い日
9
坂口恭平さん、本当に多彩な方ですね。表現する方法をたくさん持っていて、しかも全部成っている。気持ちのいい風景画、心に静かに響くイメージ。見たことがない風景なのに、いつかどこかでわたしの中にとどまっているもの。ほっと安堵させてくれる風景に気持ちをほどかれました。2021/05/24
K(日和)
7
朧げなのに写実的で、写実的なのに朧げで、思わず心が浮ついてしまう予感が萌芽する。観たい対象・風景にピントが合った瞬間とその前後の数秒を切り取ったかのようなパステル画。短いエッセイも掲載されている。双極性障害を宿した肉体を持つ人間にとっての書くことと描くこと。内面と外界の境界と混在。祝いの行為としてのパステル。ああ、祝いの発露だから対峙したときに心が浮ついてしまうのか、自分の内面からは湧き出得ないと諦めていた祝福が芽を出すとき、ぼくは泣いてしまうのだ。2021/08/14
chilly
6
パステルで描かれた絵は、外の世界と心の世界がパチッと目が合った瞬間をとらえている感じ。言葉にできない感動を味わえた。もし言葉にするなら「わぁ」「なんかいいなぁ」になるかな。眺めながらそう感じられること自体、なんかいいなぁと思える鑑賞体験だった。同時に実物をみてみたい気持ちがむくむく。あとがきもよかった。自分ではうまく説明できない感覚を代弁してくれていることばに共振。「そうそう」と了解する気持ちと、未知の生物と出会ったときの不思議な気持ち、その両方が心地よくまざりあいながら語りかけてくる絵と文章だった。2021/05/06
nao1
3
坂口さんのにぎやかな文章とは真逆の、静止した景色に癒されます。声なき自然の、ささやかな音に耳を澄ませたくなります。どこか、切なさも感じます。瞬間をとらえているからかなあ。光と影の表現が卓越しています。美大出たわけでもないのに、天才なのかなぁ。2021/10/14