内容説明
世界中で読まれたウェイリー版源氏物語を読みやすい日本語に再翻訳。完訳・全4巻。
目次
梅枝
藤裏葉
若菜(上)
若菜(下)
柏木
横笛
鈴虫
夕霧
御法
幻〔ほか〕
著者等紹介
ウェイリー,アーサー[ウェイリー,アーサー] [Waley,Arthur]
1889年生まれ。東洋学者。ケンブリッジ大学古典学科を卒業したのち、大英博物館の館員となる。独学で中国語と日本語を学び、白居易をはじめとする中国詩の英訳を発表して注目される。1925年、独力で翻訳した『源氏物語』の刊行を開始、その後『枕草子』『論語』『老子』『西遊記』などを訳して紹介した。1966年沒
毬矢まりえ[マリヤマリエ]
俳人・評論家。アメリカ、サン・ドメニコ・スクール卒業。慶應義塾大学文学部フランス文学科卒業、同博士課程前期中退。俳人協会会員。国際俳句交流協会実行委員。NHK World TV Haiku Masters選者
森山恵[モリヤマメグミ]
詩人。聖心女子大学英語英文学科卒業、同大学院修了。NHK World TV Haiku Masters選者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
84
敢えて日に数十頁ずつ読んできた。主語述語はもちろんだが、誰の語り、あるいは誰についての語りなのか明確なので、古文に苦手でも内容が理解できる。といっても、登場人物群の相関関係は、我輩には入り組んでいるし、男女の縺れ合いも一方ならぬものがあって、各帖毎に冒頭に表示してある、相関図…系図は非常に参考になり、頼りっぱなしといってもいいほど。作者であろう紫式部は頭の中だけで錯綜する図を描けているのだろうが、それだけで感心してしまう自分が情けない。それより、数十年の物語なのに、筋に破綻がないらしいのが、凄い。2021/10/24
らぱん
52
「梅枝」から「総角」まで。源氏は39歳から51歳で晩年と言える。お隠れになった本文の無い「雲隠」はこの巻の中ほどにある。光る君を失った物語は子と孫の代に移っていくのだが、子である夕霧よりは本当は孫ではない薫の人物造形がやはり面白い。ウェイリー源氏は心情が明確なので今までとは違う人物像が浮かびあがったり、曖昧で自分には謎だった行動の真意を想像することが出来た。またこの巻でウェイリー源氏の新しさは、男でも女でもなく人間の物語になっていることだと感じた。38帖「鈴虫」が無いのは残念だった。↓2020/08/12
アキ
45
シャイニング・ゲンジ(光源氏)がプリンセス・アカシの前でサッカー(蹴鞠)をしてケーキ(菊餅)を食べる。フェスティバル(宮中行儀)にはリュート(琵琶)を奏で、ダンス(舞)を踊りワイン(酒)を酌み交わす。ヴィクトリア朝イギリスでの出来事のような、煌びやかな世界だが、ゲンジに忍び寄る死の影と一夫多妻によるムラサキの悲しみ。ムラサキを追うようにゲンジも亡く、ユウギリからカオルが中心に移る。「橋姫」から宇治十帖となり、源氏物語を否定するもうひとつの源氏物語が始まる。最終巻の4巻目(5月下旬発刊)が楽しみ。2019/04/15
みつ
23
この巻は「梅枝」から「総角」まで。光源氏の絶頂期から悩みの季節を経てその死、さらに宇治十帖まではいっていく。それまでの彼と彼を巡る女性の物語から、様々の男たちから見た恋模様が目立ってくる。柏木、夕霧、そして匂宮や薫。ここに登場する(本文のある)15帖中4帖が男の名になっているのに対し女の名がないのもその表れか。それだけに姫君の区別がつきにくく、各帖に附された系図は便利このうえない。系図からは次第に故人が増え、栄華の時代の変転を伝える。宇治十帖からは明らかに文体も異なり、心理の陰翳がより深まっていく。➡️2022/08/15
ぐっちー
17
ウェイリー版第3巻は、死の気配と魔術的な祈祷に満ちている。あらゆる出来事に前巻までは詩歌と舞楽が付帯していたのに、明るく光輝に満ちた時は過ぎて別れと悲しみの比重が高く感られた。仏教の祈祷も中世ヨーロッパに置き換えると妙にファンタジー感が増す。そして舞台は宇治へ。カオルの出世の秘密、アゲマキの苦悩など寧ろヒカルの物語よりも好きかもしれない。2020/03/05