内容説明
100年前、シェイクスピアの国の人びとを涙させたベストセラーがドラマチックによみがえる!世界中で読まれたウェイリー版源氏物語を、読みやすい日本語に再翻訳(完訳・全4巻)
著者等紹介
ウェイリー,アーサー[ウェイリー,アーサー] [Waley,Arthur]
1889年生まれ。東洋学者。ケンブリッジ大学古典学科を卒業したのち、大英博物館の館員となる。独学で中国語と日本語を学び、白居易をはじめとする中国詩の英訳を発表して注目される。1925年、独力で翻訳した『源氏物語』の刊行を開始、その後『枕草子』『論語』『老子』『西遊記』などを訳して紹介した。1966年沒
毬矢まりえ[マリヤマリエ]
俳人・評論家。アメリカ、サン・ドメニコ・スクール卒業。慶應義塾大学文学部フランス文学科卒業、同博士課程前期中退。俳人協会会員。国際俳句交流協会実行委員。NHKWorld TV HaikuMasters選者
森山恵[モリヤマメグミ]
詩人。聖心女子大学英語英文学科卒業、同大学院修了。NHKWorld TV HaikuMasters選者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
やいっち
93
源氏物語の世界は色に例えたら紫と思う。1925年から徐々にイギリスに姿を現していった、ウェイリー版源氏物語。ヴィクトリア朝時代の桎梏からの脱却を苦闘していた詩人らに衝撃を与えた。T・S・エリオットやW・B・イェイツらとの交流のあったウェイリー。当時の評論家らは作者のムラサキをプルースト、ジェーン・オースティン、ボッカッチョ、ジェイクスピアになぞらえたり。ムラサキとウェイリーとの合作と言っていい本作は、ヴァージニア・ウルフにも衝撃を与えた。英訳された源氏物語を訳者らは日本語へ訳した。2021/09/20
南北
77
ウェイリーの英訳を和訳した源氏物語。桐壺から明石まで。19世紀の英国人に理解しやすいように翻案したものをさらにヨーロッパ風の感じを残した訳になっているので、エキゾチックな雰囲気が漂っている。ウェイリーの英訳からの和訳には佐復秀樹訳があるが、こちらは日本風に翻訳されているところが異なっている。手許にあった谷崎の新々訳と比較してみたが、何層ものヴェールの向こう側に見えるのが谷崎訳とすれば、本書は舞台上でスポットライトを浴びた人物を見ているようで斬新な源氏物語に出会えたと思う。表紙の絵がクリムトなのも納得。2021/09/15
らぱん
64
とても新鮮だった。百年前の名英訳ウェイリー版の戻し訳は詩人と俳人の姉妹によるもので「桐壺」から「明石」まで。当時のモダニズムの反映を生かしている源氏物語は視覚に訴える作品になっている。西洋的に書き換えられた語句や主語が明確な文章は現代日本人には返って理解し易いのではないか。また、英訳では訳し得ない和歌が挟み込まれていることが、この新訳の味わいだろう。 全体の印象はどこかの異国の物語を読んでいるような気持になってうっとりした。エキゾチックで美しいクリムトの表紙がぴったりな新しい源氏物語だと思う。2020/07/19
ワッピー
44
ウェイリー源氏の翻訳版。豪華な装丁と分厚さが目を惹きますが、これで第一分冊(桐壺~明石まで)。原文→英語→現代日本語というフィルタを通したことで、動作の主体が明確になり、かつ相当ドライな文章になった気がします。また、官職や人名が片仮名になっており、様々な用具が西洋名に置き換わっていて、眩暈がしますが、これまで読んだ源氏の中では格段に読みやすいと感じました。そして・・・わかりやすいだけに源氏のキャラがだんだん許容できなくなってきました。これが匹夫の僻みなのは認めざるを得ませんけれども。今回は明石帰りです。 2020/11/11
みつ
43
これは面白い! イギリス人アーサー・ウェイリーが1920年代に英訳した『源氏物語』をもう一度日本語に移し替える試み。訳書では省略された和歌もすべて戻しているとのこと。それでも歌物語としてではなく、大長篇小説としての巧妙なストーリー展開に夢中になる。時代も舞台も11世紀初頭の平安王朝を離れ、訳出された20世紀西洋が絶妙に交じり合い、どこか見知らぬ時代の架空の国が舞台のように読めてくる。巻ごとに人物相関図があるのも便利だし、何よりも主語がはっきりしているのがありがたい。この形あればこそ『源氏』もより身近に。2022/08/10