出版社内容情報
世界的注目を集める人類学者インゴルドの主著、待望の翻訳刊行。〈線〉をめぐる文明の多様さを自在な事例で鮮やかに切りとる。
内容説明
歩くこと、物語ること、歌うこと、書くこと、生きることは線を生むことだ。世界的な注目を集める人類学者インゴルドの主著待望の邦訳。
目次
第1章 言語・音楽・表記法
第2章 軌跡・糸・表面
第3章 上に向かう・横断する・沿って進む
第4章 系譜的ライン
第5章 線描・記述・カリグラフィー
第6章 直線になったライン
著者等紹介
インゴルド,ティム[インゴルド,ティム] [Ingold,Tim]
1948年英国バークシャー州レディング生まれ。社会人類学者、アバディーン大学教授。トナカイの狩猟や飼育をめぐるフィンランド北東部のサーミ人の社会と経済の変遷についてフィールドワークを行う。人類学のジャンルを自由に越える著書がある
工藤晋[クドウシン]
1960年生まれ。翻訳家、都立高校教諭。関心領域はアメリカおよびカリブ海文学・思想・文化研究、比較詩学
管啓次郎[スガケイジロウ]
1958年生まれ。詩人、比較文学者。明治大学大学院理工学研究科ディジタルコンテンツ系教授(コンテンツ批評、映像文化論)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nbhd
19
おもしろい本だったなあ。あらゆる営みは「線を引くこと」。そして、あらゆる線は<身体/経験>から離れていくことで直線になっていく。くねくねうねる徒歩旅行から、最短経路をとる輸送へ(空間のライン)。父だけでなく祖父との思い出もあるのに、家系図の表記は単線のみ(時間のライン)。身体運動の芸術としての書道から、印刷へ(行為のライン)。文化人類学の仕事をならべながら、「曲線的な前近代」と「直線的な近代以降」を対比させていく。書きっぷりはくねくねしてて読みにくいとこもあるけど、曲線びいきの著者だから、まぁしかたない。2017/04/12
内島菫
18
菅野修論の参考になればと思い読む。漫画はフリーハンドの曲線と道具を使った直線といった描線とトーンという既成品と文字の印刷物であるため、かなり中途半端な要素を持ってはいるが、完全にデジタルで描く場合はまた事情が異なるだろう。菅野がそうであったろう手描きの原稿は、それに基づいた複製が作品とされるので、手を入れた部分が刷られるエッチングに似ているが、エッチングは金属のような抵抗のある表面に切削を施すので、漫画原稿のように紙の上に付加物(インク)をのせていく工程とは異なる。2020/04/27
ハチアカデミー
17
「すべてが線になる」というより、「すべては線である」とでも言いたげな文化人類学者の線にまつわる考察。凄いのは多用な意味を付与されるラインを、あくまで表象として論じている点。一旦意味を剥奪し、線そのものを見つめることで、様々なアナロジーを見いだすことができる。記される言葉も、人が歩く軌跡も、地図も落書きもすべて線によって描かれるものであり、その記す、残す過程で何が起こっているのかを考察することに徹している。ラインの構造分析といえないことも無いが、むしろそれらの線を縒り集めることで人類の営みを考察する。良書。2014/09/30
Tenouji
14
命の躍動感を表現するものとしての線=ラインという視点で、人間の文化的な活動を観察した内容。編集としては面白い視点ではあるのだが、内容は比較的汎用。期待しすぎたかな…ペギオ氏の後だしね。2019/06/07
ポカホンタス
7
以前から気になっていた本。宮野真生子・磯野真穂『急に具合が悪くなる』で磯野先生がオススメしていたので読んでみた。とにかく、「線」の話。記述についてずっと興味を持ってきたが、記述物と楽譜の違いなんて考えたことがなかったし、糸は織り上げられて織物(テクスト)になり、手が動いた軌跡はそこに文字を書きつける。ガイドラインは平面を作るものであり、プロットラインは平面の上に展開されるものだ、など、発見的な言葉に溢れている。線(ライン)についての途方もなく清々しい記述に出会えたと思う。2019/11/06