目次
サワーマッシュ
解説 月と散歩(大森静佳)
著者等紹介
谷川由里子[タニガワユリコ]
1982年神奈川県生まれ。早稲田短歌会への参加を経て、2005年ガルマン歌会の連絡係をはじめる。第一回笹井宏之賞大森静佳賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
43
笹井宏之さんから辿り着いた。なるほど~と思うリズム感が、時に心地よく、時におっとっととなるのがいい。軽やかさの中にも、時々、スパッという味わいも。日常の何気ない風景を歌人独特の感性で切り取っている。2023/12/06
ちぇけら
21
風が頬撫でるから風吹いていることがわかるようだね、愛って。なんて。恋は酸欠だったから、息を吸う間もなくあなたを思っていた。だから愛してるということばを使わずに、きみを愛してみたかった。たとえばわたしを流れた風がきみの髪を靡かせるみたいに。短歌は短い歌なんだと気づいてからは、愛がるんるんたのしかった。サニーデイ・サービスも、くるりもスピッツも、きっとこうやって愛を歌にして書きつけたのだと思うとわたしは春になることができたのだ。あなたは酸素であり養分だ、風であり太陽であり、あなたは、あなたはわたしのあなただ。2022/03/04
あや
13
思いもかけない展開の歌ばかりで面白い。月をカルボナーラ色に喩えた歌が好きです。2022/07/30
qoop
8
言語選びのセンスがふわふわと捉え難いと思ったものの、そのうち像が明瞭になり、発見に続いて共感が。自分は入口で戸惑ったが、戸惑いなくスルッと入るという人も少なくないだろう。扉を潜り抜けさえすれば人を選ばないと感じた。/友だちの実家の林檎たべるまで花の代わりに玄関に置く/お鍋できたよって よ。に力が入る よ、によって持ち上がる/おなか丸出しで子猫が眠るから空気のでっぱりとして立っている/ふくらはぎぺらぺら引っ張りながら言うShakespeareの長い台詞を/油壺マリンパークに向かうのと通勤で乗る電車は違う2021/10/10
シロクマぽよんぽ
7
かなり独特な浮遊感がある歌集。最初から最後まで章立てがない。初見ではずいぶんシュールな歌風だなと感じたが、何度か繰り返して読んでみると、花鳥風月の童話という印象を持った。特に、月と風の詠み方が面白かった。「杖」「車いす」「あの世」といったフレーズも読み込まれていて、この世とあの世の中間みたいなところを詠んでいるのかもしれない。リズム、リフレイン、音楽性にも見るべきものがあり、なかなか面白い一冊だった。お気に入りは、「きれいな カルボナーラ色の月 きみがいなくなったとき食べたいな」。2022/02/12