内容説明
オーストリア=ハンガリー君主国が崩壊し、そこに暮らしていた諸民族は、自分たちの民族国家を樹立したり、すでに存在した同一民族の国家に加わったりした。取り残された「オーストリア人」が、自らのアイデンティティを求めて歩んだ100年の歴史を辿る。
目次
1 共和国誕生
2 ブルジョア・ブロック対「赤いウィーン」
3 シャッテンドルフから独裁へ
4 鉤十字が支配するオーストリア
5 オーストリア復活と第二共和国建設
6 クライスキー時代
7 オーストリアのEUへの道
8 黒・青連立から大連立への復帰
9 新版の黒・青連立
10 終章
著者等紹介
青山孝徳[アオヤマタカノリ]
1949年生まれ。1980年名古屋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得により退学。ドイツ、オーストリア社会思想史研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
78
第一次大戦敗戦によるハプスブルク帝国解体で小国オーストリアに転落したドイツ人が、苦闘しつつ国を運営してきた1世紀の歴史は生々しい。政治経済ともうまくいかず無力な政府に失望した国民はナチスドイツとの合邦に賛成し、再び敗戦国に名を連ねてしまった。散々叩きのめされたオーストリアはレンナーの手腕で何とか第二共和国を建国したが、左右によろめきながら大帝国の後継者という国家意識をつくってきたのだ。ウィーンの街角に飾られたモーツァルトとフランツ・ヨーゼフ皇帝の肖像は、オーストリア人としてのプライドを満たす装飾に思えた。2021/08/14
nishiyan
15
第一次世界大戦での敗北で誕生したオーストリア共和国の100年史。政治史の色彩の強い本書だが、オーストリア・ハンガリー帝国の解体による残り物から出来た第一共和国で生きることになったドイツ人の苦悩が随所に垣間見える点が興味深い。帝国の負の遺産に苦しみながら、オーストローファシズムの勃興と破綻の末にナチスドイツとの合邦を選択する国民の心情は複雑。敗戦後はレンナーによってソ連の力を使いつつも第二共和国を建国し、上手く西側寄りに舵を切れた点も面白い。ドイツ人からオーストリア人へと意識が変化した100年なのだろう。2022/02/12
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