内容説明
有島青少年文芸賞優秀作「青春の記憶」から、同人誌時代の秀作群、名作「光る道」「風が洗う」まで―単行本未収録作品のすべてと、作家の素顔と日常を伝える唯一の連載エッセイ「迷いは禁物」を集成。
目次
1 小説(青春の記憶;退学処分;贋の父親;追悼;留学生 ほか)
2 エッセイ 迷いは禁物(アメリカン;野菜に淫す;ダービー馬よいずこへ;美少年対策;映画中毒 ほか)
著者等紹介
佐藤泰志[サトウヤスシ]
1949年、北海道函館市に生まれる。1966年、「青春の記憶」、1967年、「市街戦のジャズメン」で連続して有島青少年文芸賞優秀賞を受賞。1970年上京、同人誌などで小説を執筆。1977年、「移動動物園」が「新潮」に掲載され、以降、文芸誌に作品を発表。1981年、「きみの鳥はうたえる」が芥川賞候補、その後4回同賞候補に。1989年、『そこのみにて光輝く』が三島賞候補になる。1990年10月、自ら命を絶つ。享年41(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
カムイ
48
佐藤泰志の初期の作品集やエッセイを載せた拾遺である。カムイはあまり私小説は読まないが彼の生と死の狭間に生きていた小説を読み若い時から死を仄めかす描写があったりする、書くことに生への渇望しながら文壇に行き込んだが敢えなく打ち砕かれてしまう。小説は18編の短中編の作品集、エッセイは競馬や引っ越しや映画を中心に綴っている、彼がアルコール依存性が原因で自死をしてしまったのが惜しまれる、死んでから脚光浴びるのは皮肉である。2023/04/23
amanon
7
この人は、どんなことがあっても、肉筆に拘るだろうな…という印象を抱いていたが、いみじくも終盤に収められたエッセイで、幾度となく万年筆について言及しているのに、溜飲が下がった。その大半が暗く、重たく、そしてヒリヒリとした痛みを描いた小説と、軽妙でユーモラスなエッセイとの対比が何とも言えず妙。こんな明るめのエッセイを書いていた人が、数年後自死を遂げたのかと思うと、何とも言えず、心が痛む。しかも、この連載エッセイが村上春樹の後をうけたものたとなるとなおさら…また、知人であった福間恵子の解説は涙なくして読めない…2023/05/13
sadaru
3
今は亡き佐藤泰志さんの短編集にエッセイを付け加えたもの。表題の「光る道」を含め、日常の中にある人間の薄暗さや醜い欲望や言い出せない想いなどを静かに表現する。ラストに登場人物たちの今後がどうなるのか余韻を残す。好きだな。もっと書いて欲しいし、知ってもらいたい作家さんだ。結構映画化されているのに、賞には恵まれなかった印象。それでも好き。2022/03/25
ロックスターKJ
1
評価:★★★★☆ 4点 若い頃に書かれた作品は、少年が主人公だったりして、やや印象が違うが、後半の作品は以前に読んだ作品と共通した雰囲気が感じられた。2022/04/25
D
1
佐藤泰志の細々とした作品とエッセイを合わせた作品集。収録されている小説のうち、初期の作品の何作かは文庫になっている他の作品に比べるとだいぶざらついた生を描いており、絶望と希望の中で生きる姿を描くというよりも、生を渇望しながら死んでいく姿を描いていると感じられた。この本に収録されている小説の情景は他の作品にも度々登場するが、これはきっと作家本人の生涯の経験から生と向き合うように小説を書くからこそこうなるのだろうと思った。そういう意味でやはり佐藤泰志の作品の多くは私小説と呼べるのだろうと思った。2022/04/29