内容説明
差別や偏見に繋がりかねないリスク要因を数え上げ、子どもを家庭から引き離す政策を維持するのか。社会保障や福祉サービスを整備し、家族に貼り付けられた「虐待リスク」を社会の責任で確実に減らしていくのか。私たちはどちらのタイプの社会を選ぶべきか。
目次
第1章 児童虐待の発見方法の変化―目視からレントゲン、そしてリスクへ
第2章 心理と保険数理のハイブリッド統治
第3章 「子育て標準家族」はどこから来たのか
第4章 ネオリベラルな福祉
第5章 親による親子分離の語り
第6章 一時保護を経験した子どもの語り
第7章 多文化と児童虐待
第8章 「不十分な親」の構築―ヤングケアラー概念の批判的検討
第9章 ソーシャルハーム・アプローチの挑戦
著者等紹介
上野加代子[ウエノカヨコ]
大阪市立大学大学院生活科学研究科生活福祉学専攻後期博士課程単位取得退学。大阪府立大学大学院人間文化学研究科・博士(学術)。現在、東京女子大学現代教養学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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azu3
1
著者の専門は社会学。今の日本は、当事者へのケア・治療・教育・矯正という対処療法と、早期発見のためのリスクアセスメントの2本立て、と。しかし、リスクを見つけることに躍起になるのではなく、それらを解消する方向に向かう社会であるべきではないか、というのが著者の主張。なるほどね。2022/05/10
saiikitogohu
1
【標準化されたリスクアセスメントの使用が浸透していった背景については、すでに欧米で研究がなされている。共通しているのは…虐待事件の報道によって引き起こされた人々の義憤と、それへの公的、官僚主義的な対応である。…限られた予算と人員のなかで、関係機関には客観的に対応している旨を説明することで責任を果たすという方法しか残されていない。…こうした対応によって、社会に起源がある問題の個人への責任転嫁という大きな解釈の読み替えを伴っていることが見えにくくなる】62022/02/20