出版社内容情報
雪女伝説はラフカディオ・ハーン『怪談』から生まれた。
わずか100年あまりの「民話」の変遷を、ハーン研究者が丹念に辿る。
内容説明
いつしか土着のものとして語られるようになる民話「雪女」。そのはじまりは、ラフカディオ・ハーン『怪談』だった。逆輸入された物語が既存の小話を駆逐し、古来の口碑然と書き換えられていく軌跡を、ハーン研究者が丹念に辿る。
目次
1 白馬岳の雪女伝説の誕生
2 松谷みよ子と童話「雪女」
3 民話「雪女」からハーンを逆照射する
4 「雪女」、遠野の物語になる―鈴木サツと失われた方言世界の復元
5 木下順二とハーンの消えた関係―歌舞伎『雪女』の世界
6 辺見じゅんの「富山十六人谷伝説」―語りの変革と伝統の創出
7 「雪女」はなぜ越境するのか―補遺 テキストと注解
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
つまみ食い
5
雪女は日本昔話ではなかったーー根付きすぎて古来より日本で口伝されてきたかのように思われる「雪女」がラフカディオ・ハーンの創作を元に手を加えられながら「民話」として語り(書き)直されていった過程を丁寧に論じる。「西洋世紀末文学の性愛とロマンティシズム」(215)がハーンから辺見じゅんにいたる系譜を通じ民話風に日本に入っていたというのはとても興味深い。まだ巻末補遺の伝言ゲームかのような、ハーン→高濱長江→青木純二…というふうに誤訳や改変を通じ原作が姿を変えていくさまも面白い。2024/06/08
やっこ
0
「雪女」は、ラフカディオ・ハーンが英語で描いた幻想譚から、日本の山岳伝説や童話、舞台脚本を経て、文字どおり息づく民話へと転生 雪女譚が国境やジャンルを超えるだけでなく、翻訳と再話、出版と口承、民俗学と創作の間を自在に行き来すること。小説が民話になり、民話が再び創作テキストへ還り、耳で聞く物語へと還流するサイクル2025/09/06