出版社内容情報
せやせや、あんた、若いさかい、
〈おたやん〉言うてもわかりまへんわな。
いまでは死語になってるかもしれまへんけど、
大阪ではお多福人形のことを〈おたやん〉と呼んでましたんや。
「夫婦善哉」を軸に、家族の“時”が結ばれる、こころに沁みる「大阪」物語。
表題作ほか2篇収録。
内容説明
「めをとぜんざい」を軸に、家族の“時”が結ばれる、こころに沁みる物語。
著者等紹介
東龍造[ヒガシリュウゾウ]
1954年、大阪市生まれ。大阪大学文学部美学科卒。元読売新聞大阪本社記者。日本ペンクラブ会員。関西大学社会学部非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yuko
3
表題作は実在のお多福人形と荒波を乗り越えて子供を育て上げた女性の人生を絡めながら描いているが、二人?が居場所と職を転々とする様子が羅列されているだけな気がして、もう少し深い人生の機微を読みたいと思った。 二作目の方が印象的だが、犯した罪の重さが強すぎて、それを恩人として志を継ぐことにどうしても共感できなかった。 生粋の大阪人の著者が書く大阪弁はあまりにもコテコテで、同じ大阪人としても、少し無理矢理感があり、もう少し時代に則した表現の方がより実感を伴うのではないかと感じた。2023/06/16
狐狸窟彦兵衛
1
夫婦善哉に登場した夫婦ぜんざいのお多福人形のことは、少しばかりは知っていましたが、詳しくはしらず、また、結局、食したことはなく、残念に思っていました。本作は人形にゆかりの人々のストーリーを人形が話して聞かせるという面白い着想の小説で、「へえ、そうやったんか」と呟きながら、一気に読み通しました。小説なので、どこまでがフィクションでどっからホンマか、知らんけど読後感は爽やかです。チンチン電車の風音もロックフォートの夕照も、主人公の語り口が作者自身にオーバーラップして、失礼ながら笑ってしまいました。2023/07/07