出版社内容情報
『ウンディーネ――水の妖精』の詩人が書いた大ベストセラー小説が、210年の時を超えて蘇る!――『指輪物語』『ナルニア国物語』の先駆となった冒険ファンタジー小説の原像。汎ヨーロッパのヴィジョンを夢幻に繰り広げた、力と美の奔出する中世騎士道絵巻。本邦初訳。原著全3部中、第1部から第2部前半までを収録(全2巻)。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
syaori
76
『ウンディーネ』の作者、ロマン派の作家フケーによる騎士物語。舞台はリチャード獅子心王の第三回十字軍の時代。美貌の乙女への愛のために騎士となり世界に踏み出す主人公オットーを中心に、幼馴染のベルタや彼が愛を捧げるガブリエーレ、高雅な騎士フォルコ、そのいとこでノルマンの戦士アリンビョルンなど優美で雄邁な人々がキリスト教化前のスウェーデンからムーア人の住むスペインまでを駆け巡り、それに伝説や魔法などが絡んで織り上げられてゆく典雅な物語に魅了されずにはいられません。ムーア人に攫われた乙女たちの行方を追って下巻へ。2023/11/24
彩菜
32
大きな力を持つという魔法の指輪に導かれるように少年オットーは旅立ちます。西へ西へ、連なる丘の向こうに、陸や川を越えた遥か彼方に、不思議でいっぱいの冒険と甘美な恋の花咲く宮殿が彼を待っているように思われるのです。彼が出会い友情を結ぶ騎士達が折々に語る遠い異国の恋物語が旅に花を添えます。これらの物語は水面に現れる虹色のようにその時々で色を変えながらこれからの彼の冒険を彩るでしょう。遠景にはリチャード獅子心王とその十字軍が東へ東へと馬を駆っており、対を成す彼の冒険もまた神の愛と共にある事を示唆するようです。2023/12/11
星落秋風五丈原
22
著者自身が騎士物語の強烈な推し活。時代に置いて行かれても推し続ける。お姫様がもうザ・お姫様!2023/08/29
tieckP(ティークP)
11
フケーの物語が『ウンディーネ』以外に読めるという点が何より良いことである。19世紀前半のドイツにはたしかに彼が騎士物語で一世を風靡した時期があるが、『ウンディーネ』はオールタイムベストに入るからこそ、なぜ人気が一時的だったかが伝わりづらい。この『魔法の指輪』は挿話の質や形容の凡庸さなど時代を超えない理由も伝わりつつ、大衆向けの分かりやすい良さがたしかにある。少しあらすじを話すと、各国を代表する騎士が存在するなかに若き主人公が突如くわわって、騎士叙任も早々に無双して褒めてもらうという上巻までの物語である。2023/03/25