内容説明
14世紀初頭、代官の圧政に苦しむスイス三州の民衆は、独立を求めて同盟し蜂起する―盟友の文豪ゲーテとの交遊を通じて構想された、“弓の名手”の英雄ヴィルヘルム・テル伝説、スイスの史実を材に、民衆の精神的自由を力強く活写した、劇作家シラーの不朽の歴史劇。
著者等紹介
シラー,フリードリヒ[シラー,フリードリヒ] [Schiller,Friedrich]
1759‐1805。軍医の子供としてシュトゥットガルト近郊の田舎街マールバッハで生まれる。劇作家、詩人、雑誌編集者、歴史学者、美学研究者。1781年、戯曲『群盗』の成功で一躍有名になる。執筆活動が禁じられた公国から逃亡・亡命。さまざまな人の援助を受けながら詩や戯曲のみならず、『三十年戦争史』『オランダ独立史』などの歴史書の執筆活動および雑誌編集者として活動。1795年からはゲーテとの深い結びつきがあり、頻繁に交わした往復書簡は歿するまで続いた
本田博之[ホンダヒロユキ]
1973年、東京生まれ。上智大学大学院ドイツ文学科博士後期課程満期退学。ドイツ・トリアー大学に留学。現在、上智大学ほか講師。専門はフリードリヒ・シラー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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フルケン
4
高校の同級生が翻訳したとのことで手に取りました。圧政に苦しむスイスの民衆が自由を手に入れるべく立ち上がる中、弓の名手として名高いヴィルヘルム・テルは悪代官ゲスラーに息子の頭の上に乗せたリンゴを射ることを命じられる。この逸話が有名だが、テルは圧政に屈しない民衆のシンボルとして描かれてはいるものの、物語全体としては人々の団結がいかにして高まっていったかを民衆の視線から生き生きと描かれている。戯曲なのでほぼ台詞のため、より臨場感があり夢中になって読んでしまった。友人、良い仕事してます!2024/06/21
nightowl
2
悪代官が好き勝手している状況に民衆が立ち上がる。彼らは自由を勝ち取るのか...?小規模な革命を端的にまとめた戯曲。これまで読んだシラー作品の中でも人数が多い分、様々な展開があり飽きさせない。民衆を救うための殺人肯定には若干首を傾げつつ、正義は勝つラストなので清々しい読後感。「群盗」の影に隠れているのが疑問な名作。2022/01/03
まどの一哉
1
テルは確かに勇気と体力に秀でた英雄だが、あまり考えて動くタイプではなく、民衆の会議に参加してリーダーとなるような男ではない。目の前の困っている人のためには命も惜しまないし悪代官には屈しないが、神聖ローマ帝国皇帝には忠信をささげる案外保守的なところがある。 そのせいか3州が悪代官の圧政に反旗を翻し結束にいたるまでの経緯には全く関わらない。したがって物語が進行していく前半には意外にもほとんど登場しない。2021/12/09
K.Yamaguchi
0
名のみ知られるシラー(岩波文庫でいうところの「シルレル」)の名なみ知られる「ヴィルヘルム・テル」の2021年新訳。子供の頭上のリンゴを射る場面が有名だけど、私は第五幕第二場が真骨頂と見た。2023/11/02