内容説明
彼は直走りに走る。毛皮が輝きを放ち、瞳が燃え上がる。いまや全世界が友達だ。犬はみな兄弟だ。この新しい世界に、鎖なんていらない。保護してもらう必要なんてないんだ。19世紀の英国詩人エリザベス・バレット・ブラウニングの日常模様が愛犬フラッシュの目を通して語られる、ユーモア溢れる伝記小説。ヴァージニア・ウルフが飼い犬に寄せたエッセイ「忠実なる友について」、エリザベス・バレットの詩「わが忠犬、フラッシュに寄す」も収録。
著者等紹介
ウルフ,ヴァージニア[ウルフ,ヴァージニア] [Woolf,Virginia]
1882‐1941。1882年、『英国人名図鑑』の初代編集者で著名な知識人であるレズリー・スティーヴンを父親として、ロンドンに生まれる。イギリスのモダニズム文学を代表する女流作家。「意識の流れ」を用いた実験的な小説を創作する。代表作に『ダロウェイ夫人』や『灯台へ』などがある。芸術家集団であるブルームズベリー・グループに大きな影響を受ける。長年精神病を患い、1941年、『幕間』の原稿を残して入水自殺
岩崎雅之[イワサキマサユキ]
1983年東京生まれ。ロンドン大学大学院修士課程修了、早稲田大学で博士号(文学)取得。現在、福岡大学専任講師。専門はE.M.フォースター、ヴァージニア・ウルフ、ゼイディー・スミス(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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やいっち
82
「19世紀の英国詩人エリザベス・バレット・ブラウニングの日常模様が、 愛犬フラッシュの目を通して語られる、ユーモア溢れる伝記小説」というものだが、ウルフが犬好きなのか微妙。そもそもある犬の伝記という題名なのだし。どう見ても愛犬からの視点ではない気がする。語り手を愛犬にすることで、バレットの生活の他人には窺い知れない細部まで描いても不自然ではないということだろうが、フラッシュがイヌっぽくない。2021/11/24
のりまき
20
フラッシュの目を通して語られるバレットの人生がなかなか興味深かった。バレット氏の執着は異常だし、あの家を出て駆け落ちしてから生き生きするエリザベス。けれど、フラッシュの地位は段々落ちて行くね。冒頭大仰に披瀝されるフラッシュの出自、特権階級であることを自負するフラッシュ、誘拐された先の恐ろしい隠れ家の様子など、面白かった。2025/04/10
かもめ通信
20
Uブックスの出淵訳と読み比べするつもりで手に取ったのだが、この本の魅力は、本篇だけでなく、附録として収録されているウルフの「忠実なる友について」と、エリザベス・バレットの詩「わが忠犬、フラッシュに寄す」、さらにはウルフとバレットそれぞれの年譜に、巻末の「訳者解題」、これらすべて、あますところなく味わえるところにあった。それにしても“彼の美徳を忘れはしない---そもそも犬には、欠点などあまりないのだが”って、ウルフ、めちゃくちゃ犬好きじゃないか!! 2021/05/22
Biofeedback1961
2
われわれが大枚をはたいて動物を購入し、それを自分のものだなどと言うのは、どこか無鉄砲であるだけでなく、向こう見図でもある。 と『忠実なる友について』の冒頭でヴァージニアウルフは書いている。 吾輩は犬である、バージョンだが、とても自己主張をしないで、淡々と物悲しい、フラッシュという名の犬。老犬になる。 猫派、犬派、どっち。2022/03/15
mamei
2
犬であるフラッシュの身体感覚が鮮やかに描かれていたのが印象深い。フラッシュが誘拐されて監禁されていた時の、柄の悪い地域の描写が、ウルフ作品の中ではなかなか珍しいんじゃないかと思う。中盤以降の、暗くて専制君主がいるイギリスと陽の光と愛に溢れた自由なイタリアの対比も面白い。『フラッシュ』が書かれた1930年代のイタリアはすでにムッソリーニがいたのだから、ヴィクトリア朝のイタリアとは違っていたんだろうけど。2022/03/11
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