内容説明
「今を生きる文学者の使命」とは何か―「文壇おくりびと」を自任し、つねに「文学のリアル」を追い求めた評論家・坪内祐三が書き継いできた、追悼と論考、文芸誌を中心とした雑誌ジャーナリズムへのオマージュ。
目次
第1章 文壇おくりびと
第2章 追悼の文学史
第3章 福田章二と庄司薫
第4章 雑誌好き
第5章 記憶の書店、記憶の本棚
第6章 「東京」という空間
第7章 「平成」の終り
著者等紹介
坪内祐三[ツボウチユウゾウ]
1958年東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業、同大学院英文科修士課程修了。雑誌『東京人』編集者を経て、1997年初の単著『ストリートワイズ』(晶文社)を刊行。2000年より、単独編集した『明治の文学』全二五巻(筑摩書房)を刊行。2001年『慶応三年生まれ七人の旋毛曲り』(マガジンハウス)で講談社エッセイ賞受賞。2020年1月13日、死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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もりくに
50
坪内祐三さんが急逝して、もう十か月。あれほど楽しみにしていたコンビニでの「週刊文春」の立ち読みはなくなった。毎週ドキドキしながら、「文庫本を狙え!」を開いて、自分の知っている本、とりわけ読んだ本の書名を見つけると、鼻高々だった。未見の本の紹介は、一字一句、丁寧に読んで、頭に刻んだ。その「黄金の日々」は終わった。この本は、彼の愛用した語彙「雑文」を、彼の後期の代表的な編集者・名嘉真春紀さんが、企画・編集したものだ。「跋」を書いた平山周吉さんによれば彼の仕事は、長編評論、連載コラム、連載日誌そして「雑文」。→2020/11/07
ソングライン
18
1958年生まれ、編集者を経て評論家となり、昨年のはじめに急逝された作者の評論集です。1980年代以降の文壇、恩師であった知の人山口昌男、古書店めぐりの楽しみ、閉店していく書店の寂しさが綴られます。特に印象に残るのは福田章二論で、「喪失」「封印は花やかに」の詳しい解説から、筆を折った福田章二が庄司薫として再登場し、その4部作の最終作「僕の大好きな青髭」を浪人生の時に読んだ幸福が語られます。庄司薫と吉井由吉が日比谷高校の同級生であることを知り、驚き、もう本当に庄司薫の新作は読めないのかと寂しくなりました。2021/01/12
Shun'ichiro AKIKUSA
3
ほかにも未収録原稿は相当ありそうだが、もう出ないのだろうか。2020/09/09
古本虫がさまよう
3
2020年1月13日に坪内氏は急逝。当然のことながら、著者による「あとがき」はなく、平山周吉氏の解説というか跋が寄せられている。 雑誌に掲載されたものを集めたので、既読のものも多かったが、改めて一冊にまとまったものを読むと、いろいろと読後感が浮かぶ。 著者とはほぼ同世代なので、その体験に関して、似通ったものがある。とはいえ、坪内氏は東京生まれの東京育ち。こちらは田舎生まれの田舎育ちで上京したのは18歳の時だから、東京・神保町体験などでは大きなハンディキャップがある。と思いきやいろいろと意外な発見もした。2020/08/11