内容説明
『時の娘』『薔薇の名前』『わたしの名は赤』などの名作をとおして、小説・宗教・美術が交差する“近代の謎”を読み解く。注目の作家による歴史ミステリの教室。
目次
第1講 『時の娘』は絵からはじまる
第2講 『緋色の研究』となりは何をする人ぞ
第3講 イギリス人には書けない「アッシャー家の崩壊」
第4講 『荒野のホームズ』あこがれのピラミッド
第5講 『薔薇の名前』の登場人物たちの名前
第6講 『薔薇の名前』宗教裁判に勝つ方法
第7講 『わたしの名は赤』偶像崇拝厳禁の国の偶像
第8講 『わたしの名は赤』歴史ミステリの成分分離
第9講 『緋色の研究』ホームズとワトスン君が交わす視線
第10講 『時の娘』は絵で終わる
著者等紹介
門井慶喜[カドイヨシノブ]
1971年、群馬県生まれ。同志社大学文学部卒業、専攻は文化史学。2003年、「キッドナッパーズ」でオール讀物推理小説新人賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
そうたそ
34
★★★★☆ 近代ミステリを歴史と美術という観点から繙く評論。評論とはいっても、著者はミステリ作家なので、ガチガチの評論にはなっておらず、むしろ小説の良さを取り入れたような構成の妙にしても、作家ならではの評論という感じの一作になっている。個人的には海外ミステリには詳しいわけではないので、知っている作品は半分ほどであったのだが、海外ミステリに詳しい人なら楽しめるのだろうか。全体的に、読んでみて特に新しい発見があったというわけではないし、一編一編は面白いが、総合的に見ると繋がりが良くないような気もした。2016/01/12
本木英朗
19
ジョセフィン・テイの名作『時の娘』を皮切りに、『緋色の研究』『アッシャー家の崩壊』『薔薇の名前』などの作品を通じて「歴史ミステリとは何か」を考察する。その切り口として用いられるのは小説と絵画における技巧の発達であり、さらにその淵源として宗教までが取り上げられる。はっきり言うと論旨は回りくどい。文体は少々癖があり、著者が前に出過ぎていささか興を削ぐ面もある。たどり着いた結論にしても、著者自身が認めるように牽強付会・我田引水の印象はぬぐえない。それでもなお、個々の考察に読むべきところは何か所か見受けられる。2015/11/22
高橋 (犬塚)裕道
10
星4.5。面白かった。副題に「ミステリと美術で読む近代」とある評論だが、私には「美術と歴史からミステリの誕生と作法を探る上質のミステリ」に思えた。提出されているテキストを一つも読んでいない私でも充分楽しめた。この本を傍らに置いて登場するテキストを読むか、登場するテキストを凡て傍らに置いてこの評論を再読したい。2019/06/11
天一
7
この方の小説を読んでみたいとずっと思っていながらなかなか読めず、初の作品がこれ(((^^;)なかなか辛辣で痛快なコメントがちらほら出てきて、テンポ良く読ませてもらいました(笑)そうか、産業革命ねぇ。その只中で生まれたミステリー、時代背景を留めながら読むのもまた違った楽しみ方ができそう。2017/03/05
黒猫
6
図書館本。ミステリを美術や歴史などに絡めて語る一冊。評論……とまではいかないのかな。何点か有名なミステリ作品が登場するんだけど、私はホームズしか読んだ事がなかった。そのホームズと産業革命の話は興味深かったなぁ。他にも紹介された『時の娘』と『薔薇の名前』は読んでみたいなぁ。2016/03/29