内容説明
横隔膜のあたりに冷たい水のような笑いがにじんでくる―60年代年からの“単行本未収録”作品を集成。江藤淳との“模倣論争”全貌をここに解禁!初期15年間の全作を網羅した300枚に及ぶ一大文学論「作品ノート」と辛辣なユーモア溢れる50篇350枚を初めて集成した著者最後の随想集。
目次
1(作品ノート(雑人撲滅週間;パルタイ ほか))
2(新しい波文学考;モラリスト坂口安吾 ほか)
3(二十世紀の聖者『ヘンリー・ミラー全集』推薦の辞;想像的合衆国の大統領『ノーマン・メイラー全集』推薦の辞 ほか)
4(東京 土佐;映画と小説と眼 ほか)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
かもめ通信
22
60年代からの単行本未収録作品を集成。著作についての「作品ノート」や、他の作家の著作に寄せたコメントなどがつまっている。私のような初心者には、倉橋作品をもっと読み込んでいたならば、もっと味わい深かったかもしれないと思わせられる一方で、作家がそんな風に考えて書いた作品とはどんなものなのだろうか?という興味をもたせるものにもなっている。それにしてもこの人の書くものは不思議だ。強く共感するわけでも感銘を受けるわけでもなく、書かれているあれこれを理解するのが難しいことさえ多いのに、魅せられてしまうなにかがある。2015/09/24
S.コーニック
4
「是非、倉橋に一目置かれるような男になりたいものだ」二十を過ぎて倉橋作品集を取った私のその手は熱く、頰も赤く染まっていたに違いない。 当時は自信満々だったが、四十になった今の私にはその態様は些かも無い。 四十にまで(のらりくらりと)歩んできたように思う。それは、それでも、自分の道であった。 倉橋は見てくれやしないだろう。しかしながら、その道は、それで誇らしい気持ちなのである。 倉橋作品を愛し、倉橋エッセイを批判と共感をないまぜにしつつ惑溺してきた、そんな我が身をも改めて振り返らせてくれる倉橋補遺。2017/12/12
DEN2RO
1
著者逝去後十年の節目の年に、単行本未収録の文学論と随筆五十篇を集めて収めた本です。豊かな想像力と鋭利な感性、独特のスタイルをもつ端正な文章。人気がなかったそうですが、私はファンでした。彼女の新しい作品が読めないことが、あらためて残念に思われます。2016/01/16
amanon
1
他の作品にはみられない、硬質な文体が印象的でかなり読み応えがあった。自分とは正反対とも言える思想の持ち主が書いた本がどうしてこれ程までに魅惑的に映るのかちょっと不思議な気になるくらいに引き込まれて読み進めることに。ファンにたまらないのは、『作品集』に収められた「作者ノート」。ここまで正面切って自作について語る倉橋の言葉は非常に貴重。それから、本書で大江についての言及が散見されるのが興味深かった。個人的に痛快な気持ちになれたのは、江藤淳への言及。これを江藤がどう読んだのかが非常に気になるのだが…2015/11/01
MUSHI MUSHI
0
倉橋さんがこんなに自分のことなど書いているとは思っていなかった2022/11/03